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イかせ屋…
第5章 キス
「それが昌さんの母親方の家系で代々受け継がれたイかせ屋だ。」
お母さんの家系?
時代は代わり…、イかせ屋の形も変わってく。
例えば、遊郭の花魁が売られてる時代には処女である花魁を買い取った夫に初夜に付き物である不愉快な思いをさせない為にと、処女のままイかせて男との悦びを教えるのがイかせ屋…。
また戦時中は夫を戦地で亡くした未亡人を慰めるというイかせ屋…。
時代時代の女性を悦ばせる為の究極のテクニックを代々受け継ぎ伝えていく家系。
それは、あくまでも風俗としての仕事…。
今の時代はお金持ちのセレブ達が昌さんに2千万を払ってでも抱かれたいと望む…。
「その仕事に今日は行ってるって事?」
なんか不機嫌になっちゃう。
「そうだよ。だから俺も行きたいのに、お前なんかの面倒を押し付けられた。」
ヒロ君も不機嫌だ。
私はなんなんだろう?
昌さんのお客様じゃない。
だけど昌さんは仕事として私に接してる。
その扱いは究極の恋人…。
今日はそれを他の人とやってる。
「ねぇ、キスってルール違反なの?」
私の質問にヒロ君が呆れた顔をする。
「当たり前だろ?キスは本命…、つまり、それをする相手は本当の恋愛相手なんだから、それはもう仕事じゃないって事になる。だから風俗じゃ客とはキスをしないってルールがあるんだ。」
キスをして貰えない私は本物の恋人じゃない…。
「昌さんがすげーのはキスだけでなく本番も無しってとこなんだ。あの人はあくまでも言葉と手のテクニックだけで女を昇天させられる人なんだ。」
ヒロ君は興奮をした顔で言うけれど、私は段々と冷めた気持ちになってく。
私はあの人の恋人じゃない…。
私はあの人に愛されてない…。
頭ではわかってるつもりだった。
私はあくまでも借金返済の女…。
それでも昌さんに愛されたいとか欲深い事を考えてしまう自分が惨めで悲しくなる。