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イかせ屋…
第6章 伝統



昌さんってこういうテクニックをいつから身に付けて来たのだろう?

そんな疑問を抱きたくなるほど彼のエスコートは完璧だと思う。

時給2千万の男…。

そんな人を独り占めにしてる優越感で足取りも軽くなる。

映画館…。

何年ぶり?

高校生の時に友達と来たのが最後かしら?

その頃は田舎の実家に居た。

短大では都会に出たくて我儘を言って家を出た。

その時がチャンスとばかりに兄が結婚をして実家に収まってしまう。

農家の我が家。

だから学生時代は親からの仕送りとは別に野菜とお米を貰い、私自身はちょっとアルバイトをすれば生活には困らなかった。

短大を出て就職をすると兄に子供が出来た。

跡取りが確定をした途端に両親は私に冷たくなる。


「あんたもさっさと結婚でもして、どこかの家庭に収まりなさい。」


そんな嫌味が嫌で実家にも寄り付かなくなった。

その頃は雄君に間違いなく夢中だったし…。

あぁ…、嫌な事を思い出した。

せっかくの昌さんとのデートなのに…。

映画は人気がある映画とイマイチな映画の2種類がある。

昌さんが選んだのは人気がないイマイチの映画…。


「こっちの映画じゃないの?」


てっきり人気がある方を選ぶと思ってた。


「梓はそっちが見たかったか?」


昌さんがクスクスと笑う。


「どうせ、内容なんか頭に残らないぞ。」


耳元で昌さんが囁く。

ドキドキとする。

映画なのに昌さんは違う事を考えてるとわかる。

何をされるの?

それは恐怖ではなく甘い期待…。

ジュースとポップコーンを買って座席へと向かう。

カップルシート…。

木の仕切りがあり、クッションまで完備されてる。

2人でゆったりと座れるソファーのようなシート…。



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