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イかせ屋…
第9章 再会
その彼女の目からは一滴の涙が零れて流れ落ちる。
昌さんの指がその涙を拭う。
「良かったよ、千里…。ゆっくりとおやすみ。」
昌さんがそう言うと彼女の裸体にシーツを掛ける。
へなへなと腰が抜けてへたり込む。
ヒロ君がニヤニヤとする。
「清、後は頼む。」
そう言った昌さんが軽々と私を抱き上げる。
ただ昌さんにしがみつくしか出来ない。
部屋を出てエレベーターの前で昌さんが私の頬にキスをする。
「自分で立てるか?」
そう聞かれて慌てて
「立てる!」
と答える。
本当の事を言えば、足はまだ震えてる。
だけど、ここはホテルでお姫様抱っこのままロビーを抜けるとか恥ずかしくて死にたくなると思った。
私は一体何を見たの?
その質問を昌さんにしたくて堪らない。
昌さんとヒロ君と3人でタクシーに乗る。
私の肩を抱いたままの昌さん。
「ご感想は?」
不機嫌な声で私に言う。
感想とか言われても…。
「あの人…、何故、昌さんに依頼をするの?」
素直に聞くしかなかった。
昌さんがため息をつく。
「彼女のご主人は2年前に亡くなった。今は2歳になるお子さんと2人で暮らしてる。」
重い声で昌さんが重い言葉を吐く。
またしても余計な事を聞いてしまったと後悔する。
彼女はご主人とお見合いで出会った。
真面目で真っ直ぐで一途なご主人が熱心に彼女にプロポーズをして出会いから僅か半年ほどで結婚をしたらしい。
それだけご主人の彼女に対する愛情が深かった。
彼女は結婚をして僅か3ヶ月で妊娠する。
本当に幸せの絶頂期だったのにご主人が事故で亡くなり、彼女はそのショックで出産する。