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イかせ屋…
第9章 再会



幸い臨月ではあった為に子供は無事に生まれる。

だけど彼女は未だにご主人を失った事実から立ち直れずにいる。


「亡くなったご主人が一途な人だったから、彼女はこの先もご主人だけを思って生きようとしてる。」


昌さんが悲しい顔をする。

だったら、イかせ屋なんかに依頼をする必要はないんじゃない?

そんな風に思ってしまう。


「彼女は資産家の娘なんだ…。まだ若くて綺麗なんだから、前を向いて次の新しい恋愛が出来るはずだとご両親が彼女の心配をしてるから俺に依頼が来た。」


昌さんの話に胸が痛くなる。

他の男の人にイかされればご主人の事に踏ん切りがつくだろうと昌さんが雇われた。

今も彼女の身体はまだご主人に抱かれてると錯覚をしたまま感じたがる。


「だから…、あんなやり方を?」


哀しみの自慰行為…。

彼女は泣きながらご主人である孝さんに抱かれ続けてるという錯覚の中を彷徨う。


「そうだ。その行為が独り善がりで虚しい事なんだと彼女が気付くまでは俺と契約中になる。」

「何故、わざと人に見せるの?」

「自分がやってる事は恥ずべき行為だと彼女が認識をしやすくする為だ。」


現実逃避をしてる彼女を現実に引き戻し、新たな恋愛へと踏み出せるように導くのが昌さんの仕事…。

そんな状況にズカズカと私は土足で踏み込んだ。


「ごめんなさい…。」


謝っても取り返しはつかない。

それでも、謝るしかない。

肉体的な性の快楽を得る為だけの存在がイかせ屋なんだと思った。

昌さんが性で傷ついた心のメンタルケアも引き受けてるなんて思いもしなかった。

私自身が雄君に傷ついた心を昌さんに癒された事実を棚上げにした。

自分の我儘だけで彼の仕事の邪魔をしようとした以上は今の昌さんに、どんな顔を向けていいのかがわからなくなる。



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