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3年目のプロポーズ
第1章 3年目のプロポーズ
「もうあれから3年も経ったんだね」
美樹と優馬は、並んで夜道を歩いていた。
「なんか、未だに信じられないな」
美樹は高い位置にある優馬の顔を仰ぎ見た。
「うん?」
「私と優馬が付き合ってるなんて」
月明かりに照らされた、優馬の美しく整った顔に、美樹は嬉しそうに微笑みかけた。
「……それ、よく言うけど……何でそんなこと思うの?」
優馬は楽しそうにくつくつと笑う。
「っ、だって! 性格も良くて完璧な優馬と、絵に描いたような凡人の私が恋人同士なんだよ?」
付き合い始めた頃、会社中の女性社員に素っ気なくされた。あれはきつかった。常識を兼ね備えた社会人とはいえ、女という生き物はけっこう怖いらしい。
「だから完璧じゃないって。僕、けっこう独占欲強い方だし」
「そうなの?」
しかし優馬が美樹を束縛したことなど一度もない。(恋人らしく、やきもちをやくことはあるが)
「うん。美樹と男の人が話してるだけでひやひやする」
「えー!? それは大袈裟だぁ」
「ふふっ、ほんとだよ?」
笑うと同時に、彼の口から白い息があがる。
「僕は男だし、君より年上だからそういうところは隠してるけど」
優馬はぽん、と、美樹の頭に手を乗せた。
「それぐらい僕が美樹のこと、好きなんだって覚えておいてね?」
美樹の顔がぼっと赤くなった。この人は、こういうことを平気で言う。
「あ、顔赤い」
「……寒いからだもん」
「ふふっ、まぁ、2月だもんね?」
今日は2月14日。世間はバレンタインデーと称し、チョコレート合戦になっているが、二人にとっては恋人になった記念日なのである。
「さぁ、どうぞ」
そして今日は、優馬の家で二人でゆっくり過ごすのだ。
「お邪魔します」
優馬は4年前、広い庭付きの立派な一軒家を購入した。
優馬は優秀な会社員であると同時に、副業もいくつか行っているため、お金には困っていないらしい。