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3年目のプロポーズ
第1章 3年目のプロポーズ
美樹はごくりと唾を飲んだ。
今日は、付き合って3年目────節目の日だ。今日こそ、プロポーズされるかもしれない。
美樹は現在24歳。周りの友人からちらほら結婚の報告も届いている。美樹の小さい頃の夢は“お嫁さん”だ。それは未だに諦めていない。
それに、確証がないわけではない。つい最近、彼の家に泊まりに行ったとき、部屋にウェディングドレスのパンフレットがあるのを見つけたのだ。
こんな素敵な人と一生一緒にいれるなら────絶対、幸せになれる。
「飲み物出すから、座ってて?」
「ありがとう」
美樹はリビングの中央に置かれたソファーにそっと腰掛けると、部屋を見渡した。
ものがきちんと片づけられていて、綺麗だ。インテリアもシンプルだがどこかセンスを感じさせる。
さすが優馬だ、と美樹はしみじみ思う。
キッチンでてきぱきと飲み物を用意する優馬の姿を眺める。
3年付き合っても、優馬の欠点という欠点を見たことがない。元々、人柄がいいのは知っていたが、それはあくまで“外の顔”だと思っていた。
大人になると、人間関係の付き合いをスムーズにするために“いい人ぶる”ことはよくある。美樹も仕事とプライベートの顔は分ける人間だ。
ただ、優馬は恋人の美樹の前でさえも、完璧だった。紳士的でスマート。自分の気持ちを言わなくても汲み取ってくれて、一歩先に行動に移してくれる。非の打ち所のない恋人だ。
「あ、おいしい」
「外寒かったから、いつもより砂糖多めにしてみた」
いつも彼が出してくれるホットココアが優しく美樹の身体に染みる。
嬉しそうに味わう美樹に、優馬もまた微笑み返した。