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愛しき俺の半身
第4章 迷惑な女の子
少し空いたスペースで星桜と杏果がタコ焼きを食べる。
「星耶…。アーン…。」
立ったままタコ焼きを食うとか器用な事が星桜に出来る訳がない。
しかも星桜は猫舌だ。
タコ焼きを冷まし、星桜の口のサイズまでタコ焼きを箸でちぎって小さくしてやってから口を開ける星桜に俺が食べさせる。
「お兄ちゃん…、過保護…。」
そう言いながら怜太は杏果が差し出したタコ焼きを食べている。
「ハフハフして食べる醍醐味はないよね。」
杏果までもが俺と星桜のやっている事を見て笑う。
「ハフハフ?」
星桜が不思議そうな顔をする。
「熱々を口の中でハフハフして食べるのが熱い料理の醍醐味。」
怜太が杏果に同意をする。
「星桜にハフハフなんかさせたら、口の中が火傷で傷だらけになるだけだ。」
過保護でも星桜の場合はそうしてやるしかない。
「ハフハフ?」
感覚がわからない星桜はずっと不思議そうな顔で俺を見ていた。
他人に簡単に出来る事が出来ない星桜には不思議な事がいっぱいある。
「今度、家でゆっくりと教えてやるから…。」
とりあえず笑って星桜にはそう言ってやるしかない。
「ハフハフ…。」
星桜はぼんやりと考え込む。
たかがタコ焼きだけで30分以上の時間がかかってしまった。
「すげー…!?」
工業大学だけあって、ロボットなどの展示もある。
怜太なんかは喜んで見ているけれど星桜はただぼんやりと見ているだけだ。
星桜の大きな目には、何がどんな風に見えているのだろう?
時々、そう考える。
双子なのに、元は1人の人間なのに、星桜と俺の見え方は違う。
俺は星桜を見ていて星桜は俺を見ている。
星桜が見ている風景や星桜が感じる感覚を知りたいと思う。