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アゲマン!
第11章 父親の謎
何故、そんな人物の別荘にわざわざ来たのかと問う前に龍平はタバコを携帯灰皿で揉み消すと
「行くぞ…。」
と沙那を促し、その別荘へと入った。
玄関の戸口で呼び鈴を鳴らす。
しばらくすると、玄関の立派な木の扉がゆっくりと開き、中からは老婆の顔が見えた。
「どちら様…?」
気の良さそうな老婆が笑顔で言う。
だが、その笑顔が沙那を見た瞬間に消えた。
「理奈様!?」
老婆が幽霊を見たような顔をした。
沙那にはこんな場所で見知らぬ老婆に驚愕をされる覚えはない。
「すみません…、川中 沙那と言います。理奈の娘です…。」
そう答える沙那に老婆がボロボロと涙を流し始めた。
「そう…、沙那様…、そう…、では理奈様は…、ああ…。どうしましょう?」
老婆はボロボロと泣きながら沙那の腕を掴み、今にも崩れ落ちそうになるものだから沙那は狼狽えて龍平を見た。
「悪いが、彼女は何も知らないし、覚えてもいない…。だから彼女にわかるように全ての話をしてやってくれないか?」
龍平が老婆に言う。
老婆は涙を袖で拭いながら慌てたように沙那から離れた。
「どうぞ、お入りください。私にわかる事は全てをお教え致します。」
老婆のその言葉に龍平が言っていた全ての答えを教えてくれる人はこの老婆なのだと理解をする。
老婆に促されるようにして沙那と龍平はその別荘のリビングへと入った。
かなりレトロなリビングだった。
暖炉があり、モダンな食器棚やモダンなソファーがあるリビング…。
老婆は沙那達の為にコーヒーを入れると沙那達が座った2人掛けのソファーの前に腰掛けた。
「さて、何からお話をすべきやら…。」
そう言った老婆はゆっくりと自分の昔話を始めたのだった。