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アゲマン!
第2章 追加される謎
「どういう事…?」
ますます母親の意図がわからなくなる。
「この店をやれって意味?」
美春も不思議そうな顔を沙那に向ける。
「何の為に?」
「ほら、手紙には沙那が求める人を探せってあったじゃない?お客からその人を探せって事とか…。」
あの紙切れって手紙なの?
美春の言葉に沙那が悩む。
それに、そんな奇妙な遺言を残す母親が世の中に存在をするのだろうか?
過去には1度だけ、沙那は短大を卒業した後の事について理奈と話をした事がある。
沙那が一切の就職活動をしなかったからだ。
「沙那は就職をしないつもり?」
夕食を沙那と食べながら無表情に理奈が聞く。
「しばらくは自分探しをしたいのよ。アルバイトとかして海外旅行をしたりしてみるつもりなの。」
生まれて初めて母親である理奈に反抗的な態度で話をした。
沙那の答えに理奈がふふふっと笑った。
滅多に笑顔なんか見せる人ではなく、沙那はその笑顔に一瞬戸惑った。
「大学を出た後は貴女の好きにしなさい。沙那がやりたい事をすればいい。貴女は貴女が求めるものを探しなさい。」
母親があっさりと自分探しを認めた事には、かなり驚いた。
それと同時に大学を出たら理奈が今以上に沙那から離れるような気もして、沙那は寂しさも感じた。
結局、沙那が大学を卒業する前に理奈は旅立ち、沙那は本当に孤独になってしまった。
その理奈の謎の遺言がこのカウンターだけの店で働けという遺言なら、ますます沙那は悲しくなると思ってしまう。
「ものは試しにお店を開けてみない?」
美春が子供みたいな顔をする。
「簡単に開けるって言っても、このお店って、どう見てもパブとかスナックって水商売だよ?」
「そう、みたいだよね?」
カウンターの中に居た美春が壁に備え付けてある戸棚を開けてそう言った。