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アゲマン!
第2章 追加される謎
戸棚の中にはまだ封を切っていない真っ新な酒のボトルが何本か揃っている。
グラス、アイスペール、おしぼりやコースターなど酒をお客に出す為の備品も全て揃っている。
製氷機に冷蔵庫…。
今夜からでもこの店は開けられるという状況で沙那は再び考え込むしかなかった。
母さんは私に何をさせたかったの?
沙那は理解が出来ない母親にそれだけを問い続ける。
とにかく、今日の今日でいきなり店を開けるという訳にはいかないだろうと、沙那と美春は今日は店の周りの雰囲気を確認をして帰る事にした。
夕方になり、居酒屋が開いたので沙那達はそこで今夜の夕食を取る事にする。
この町の駅を挟んだ反対側がオフィス街という事もあり、客層はどうやら普通のサラリーマン風の男性が多いという事だけは理解をした。
今日は土曜日だから、夜になっても客足は少なく、開いている店もまばらなのだと感じた。
リサーチをしてわかった事は居酒屋などは6時頃に開き、飲み屋と言われる店は7時頃に開くという事。
ならばと美春が目を輝かせる。
「7時から11時くらいまでバイト感覚でお店を開けてみる。」
「本気?」
「駄目元で一週間だけは試してみてもいいんじゃない?」
どうやら美春は自分の知らない世界を体験出来ると遊び感覚で期待をしているようだ。
沙那も社会見学としては面白いかもしれないとは思ってしまう。
美春と2人なら…。
ちょっとした軽い気持ちで月曜から金曜までの5日間だけと決めて、あの店を開けてみる事に決めた。
問題は沙那にも美春にも水商売の知識など全くあるはずがない。
「オーナーは沙那なんだから、沙那の好きにすればいいじゃん。もし文句を言うお客が居ればお代は結構ですって言って帰って貰えばいいよ。」
商売っ気がなく、遊び感覚で開ける店だから、お嬢様の美春は軽くそう言った。