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アゲマン!
第11章 父親の謎
不思議な事に敬一郎の体調も理奈が来てから、かなりよくなっていた。
疾患である以上は敬一郎の病が治る事はないが、20歳まで生きるのが厳しいと言われた敬一郎が理奈と理奈が大学を卒業する年まで穏やかに生きる事が出来た。
その話を聞き、沙那は考える。
もし、この段階で父親と母親がそういう恋心をお互いに持ち合わせていたのなら、父親の望みは理奈の為に長生きを望み、母親はその敬一郎の望みを叶えようと受け入れたはずだ。
父親と母親の静かな恋に沙那は涙が出そうになった。
その辺りについては理奈と敬一郎の2人だけの話になる為に里は何も知らない。
理奈が無事に司法試験に合格をした冬だった。
敬一郎の心臓に大きな発作が起きてしまう。
理奈は敬一郎に付き添い続け敬一郎も理奈の為にと懸命に戦っているように見えたと里が言う。
「最後の敬一郎様のお言葉は理奈様に対して『すまない…。君との約束を守れなかった。』というお言葉でした。」
敬一郎が息を引き取り、しばらくは理奈と里の2人で暮らした。
ある日、理奈が里に
『どうしよう…、敬一郎さんの子供が居るの…。』
と言い出した。
里は当然、喜んだ。
このまま、敬一郎の子供を産み、山端家の家族として暮せばいいと里は理奈に伝えた。
半年後、理奈はここで沙那を産んだのだ。
「私って…、ここで生まれたの!?」
驚愕をする沙那に今まで黙ったままだった龍平が
「お前の出生届がここの役所で出されていた。だから父親の事を突き止める事が出来たんだ。」
と初めて口を挟んだ。
里の話では、生後3ヶ月までは沙那はこの別荘に居たらしい…。