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アゲマン!
第11章 父親の謎
里の話を全て聞き、もう日が暮れるという時刻になっていた。
里が泊まって行けというから龍平は敬一郎の使っていた部屋を沙那は理奈が使っていた部屋に泊まる事にした。
2人の部屋の間には敬一郎が使っていたアトリエがありお互いがこのアトリエを通して行き来が出来る造りに理奈と敬一郎がアトリエで静かに愛を育んだのだと沙那はクスクスと笑った。
気丈で堅物とまで言える理奈が敬一郎と居た時間だけは普通の少女として笑顔を見せたのだと敬一郎が遺したスケッチブックの中にある何枚かの少女の絵を見て沙那は感じた。
今は、そのアトリエで沙那が父親の遺した作品を見て周り、そのアトリエのテラスで龍平がタバコに火を灯す。
全てを理解はした。
後はこの先をどうするかだ。
里は敬一郎が遺した遺産の管理人を沙那が娘として受け取るべきだと言っている。
敬一郎の家族は敬一郎をこの別荘に1人にした負い目から里が管理人になっている事に何も言わなかったらしい。
沙那が龍平の居るテラスに出た。
クリスマスの夜…。
ここは軽井沢であり、かなり寒いと言える。
龍平が吸うタバコの香りがした。
「大学を出たら、ここに帰るか?」
龍平が俯いたまま沙那に聞いた。
ここならば里が居る。
敬一郎の遺産の管理人になれば、沙那は穏やかな生活が送れる。
沙那の能力の事をこれ以上は知られずに沙那にも理奈のように静かな暮らしが出来ると龍平は考える。
ただし、その言葉は沙那には辛い言葉にしか聞こえない。
大学を出たら龍平との契約が終わる。
ここに帰ると決めたら、2度と龍平とは会えなくなる気がしてしまう。
「その方がいいと本当に龍平は思うの?」
気丈な態度で沙那は龍平の真意を知りたいと願う。