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アゲマン!
第2章 追加される謎
結局、お酒の作り方すらわからない沙那達は男に言われたグラスを出し、お酒もそのまま瓶ごと男に渡し、男はただ自分の手酌で飲むというおかしな光景になってしまった。
「お仕事帰りですか?」
美春が無理に作った笑顔で会話を試みる。
「そういう君らは学校帰りか?」
男にサラリと切り返されてしまうから結局はアタフタとして会話なんか成り立たない。
小一時間ほど男が酒を飲み、椅子から立ち上がった。
「いくらだ?」
はっきり言ってお金なんか請求が出来る状況ではない。
「お代は結構です…。」
沙那は申し訳なさを表す気持ちでそう言ったつもりだった…。
しかし、男はポケットからクシャクシャの千円札をカウンターの上に投げるように出すと
「母親に振り回されているだけならともかく、お遊び気分でなら、こんな危険な事は辞めるべきだ。」
とだけ言い残し、さっさと店から出て行ってしまった。
「ちょっと!?」
沙那が男を追うように店から飛び出した時には男が乗ったエレベーターの扉は閉まり、男の言葉の意味を問い質す猶予は沙那に与えられる事はなかった。
「何者!?」
美春が少し身震いをした。
沙那達が知らない何かを知っている男が突然現れて消えた。
その事実だけで沙那達には充分な恐怖を感じる。
その反面、好奇心も湧いて来る。
その夜は沙那の家に美春も泊まり、2人でひたすら男の話で盛り上がる。
「怖いけど…、親切な人には違いなかったよね?」
美春の意見には沙那も賛成だ。
ド素人の沙那達に水商売の基本だけは親切に教えてくれた。
支払いも飲んだ分だけはと支払いをして行った。
タダだからシメシメとばかりに沙那達の足元を見るような真似はしない人だった。