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アゲマン!
第2章 追加される謎
美春がすぐにグラスとウィスキーを用意してソーダ割りの段取りを始めた。
「お仕事帰りですか?」
笑顔で美春が問うと男は
「うん…、そう。」
と爽やかな笑顔で返して来る。
この段階で本来なら沙那達は警戒をすべきだ。
この店がオープンをしている事実は基本的に誰も知らないという事…。
入り口には会員制のプレートがある以上、普通の一限客がフラリと現れるはずがないのだ。
いくら爽やかで真面目そうなイケメンであっても、この店に来た以上は何らかの目的があると思うべきなのに沙那も美春も自分達の退屈をどうにかしてくれる男に警戒心を全く持ち合わせていなかった。
「お仕事は何をしているんですか?」
「うーん…、親の拗ねかじりみたいな立場?」
その男がスーツの内ポケットから名刺ケースを取り出すとカウンターの上に1枚の名刺を出す。
ある有名な食品メーカーの専務という肩書き…。
「凄ーい!?」
美春と沙那は素直にそう言った。
その食品メーカーは財閥だ。
株式を公開はせずに一族だけで運営をしている一流企業…。
沙那はともかく、社長令嬢である美春にはそういった会社に対する多少の知識がある。
「凄くないって、本当に親の拗ねかじりだからさ。」
名刺には小笠原 真希(まさき)と名を記す男が爽やかな笑顔を崩す事なく言う。
しばらくはその食品メーカーが販売をするレトルトカレーや、冷凍食品の話で盛り上がる。
「日本を代表する食品メーカーだけあって凄いですよね…。」
沙那は素直にそう言った。
「でも、ほとんどが祖父が作ったものを今風にしただけで、ここ最近は横ばいだよ。」
ずっと笑顔だった真希が少し厳しい顔をした。
「そうなんですか?」
美春は真希に対して軽い気持ちで聞いた。