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アゲマン!
第3章 更に深まる謎



男はただ沙那の顔を真っ直ぐに見た。


「試してみねぇと俺にもわからん部分があんだよ。」


そう言った男が沙那の腰を抱き上げるようにして引き付ける。


「試す?」


男を沙那が見上げた瞬間だった。

沙那の口にふわりとバーボンの香りとタバコの香りが広がった。

なっ!?

本来なら、いきなり見知らぬ男に接吻をされているのだから、沙那はひっぱ叩いてその男から離れるべきだった。


「っん!」


エレベーターの壁に沙那を押し付けるようにして男は沙那の唇を貪るようにキスをする。

軽く唇を舐める男の舌に翻弄される沙那は身体に力が抜けてしまい抵抗をするという事を忘れてしまうほどに頭が熱くなった。

エレベーターの扉が開き男だけがエレベーターを降りる。


「明日の夕方に1人でここに来い。」


男はそんな言葉だけを残して立ち去った。

何があったの…?

ひたすら、それだけを沙那は考え続けた。


「沙那?大丈夫?」


店を片付けながら美春が沙那の心配をする。


「大丈夫…、なんか疲れちゃったみたい。」


そう言って誤魔化した。

明日、1人で来いと男が言った。

美春に言えば絶対について来ると言う。

美春が沙那を心配してくれるから母親が亡くなってからも沙那は前向きにやって来れたのだ。

店を閉めて、美春と別れてから沙那は1人の家に帰り自分の唇に手を当てて考える。

別にキスは初めてではない。

高校生の時に沙那にだって彼氏は居た。

単純にその時のファーストキスは沙那にとっては苦い思い出になってしまっただけだった。

高校時代の沙那は電車通学だ。

女子高である沙那に出会いのチャンスなんか滅多にない。



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