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アゲマン!
第3章 更に深まる謎
バイトも部活もしていない沙那に他校生との交流などなく、時々、他校生のカップルが手を繋いで駅のホームを歩く姿に憧れを抱く程度が沙那の恋愛だった。
そんな沙那にも憧れから抜け出せるチャンスが訪れた。
その日は雨のせいでいつも以上に電車が混んでいた。
沙那のお尻に何かが触れるような気がして沙那は少し身体を前へと寄せた。
幸い沙那の前に立つ人は中年の女性でいわゆるおばさんという人種だ。
おばさんはグイグイと寄って来る沙那に嫌な顔はしたが沙那は自分のお尻に当たる何かから逃げるのに必死だった。
一度、二度…、逃げた沙那を追うように沙那のお尻には何かが触れて来る。
痴漢…。
そう沙那が確信をするにはさほどの時間は必要としなかった。
おばさんの方は沙那を迷惑な女子高生という目でしか見てくれずに沙那が次第に泣きたくなって来た頃だった。
「こっちに…。」
沙那の腕が強引に引っ張られて沙那は扉側に背を向ける形になっていた。
「痴漢だろ?最低だな。」
沙那を助けてくれた男の子が少し車内に聞こえるようにそう言う。
一斉にサラリーマン風の男の人達が無罪を示すかのように自分の両手を吊革に乗せた。
沙那に嫌な顔をしていたおばさんもなるほどという顔に変わった。
「ありがとう…。」
沙那は助けてくれた男の子にそう言った。
それが沙那の初めての彼氏となる渡辺 草太(そうた)との出会い…。
その日以来、草太は毎朝、同じ電車で沙那の隣りに立つようになった。
草太の学校は沙那の学校の1つ向こうの駅にある共学の公立学校だ。
極普通で平凡な草太だが、沙那には恩人で優しい青年だった。
通学の度に話をして、ひと月もすれば帰りも同じ電車で待ち合わせをしたりするようになった。