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アゲマン!
第3章 更に深まる謎
嫌な事を思い出した…。
男とのキスにそんな過去しか思い出せない自分が情けなくなる。
それでも…。
あの男にされたキスを嫌だとは感じなかった。
少し荒々しく手馴れたキスに未熟なキスしか知らない沙那は間違いなく、新たなときめきを感じていた。
1人で来い…。
本当に私1人で会っても大丈夫なの?
何故か火照る身体を抱きしめるようにして沙那は眠った。
翌日の沙那はずっと落ち着かない1日を過ごした。
学校もなく、美春も居ない退屈な1日。
男との待ち合わせは夕方…。
食事もままならぬまま、何度もシャワーを浴びては化粧をやり直して男との約束に着て行く服を選び直す。
別にデートじゃないのに…。
わかってはいるが草太と付き合っていた時の気分のように沙那はその待ち合わせにソワソワとしてしまう。
部屋一面に広げた服…。
何やってんの?私…?
ふふふっと沙那は自分に笑う。
母親を亡くしてから、こんな風に笑う事はなかった。
やっと笑えるようになった自分に嬉しくて母親が遺した謎解きも、満更悪くないとか思ってしまう。
そんな風に浮かれた気分で沙那は少し早めに家を出た。
当然、待ち合わせ場所である店の前には早く着いた。
「川中 沙那さん?」
まだ扉が開いていない店の前には、またしても沙那が知らない男が立っていた。
真希と似たようなスーツを着たサラリーマン風の男。
だが真希とは違いその男は鋭い目付きで少し近寄り難い雰囲気の男だ。
淵なしの眼鏡をしているが、その奥にある瞳にとても冷たいものを感じる。
「今日はお店はお休みです…。」
沙那は無難な答えとしてそう答えたつもりだ。
そう言えばその冷たい顔の男がこの場所を立ち去るとばかり思っていた。