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アゲマン!
第6章 恐怖の謎
あまりにも待たされた為に、沙那がもう一度呼び鈴を鳴らすべきかと迷った時だった。
沙那の目の前の木戸が開き、中からは着物を着た女性が現れた。
随分と老けた女性ではあるが、間違いなく母親の身内だと感じる。
母親によく似た女性…。
母親よりも冷たく感じる女性…。
「あの…。」
「貴女が沙那さん?理奈の娘?」
沙那の母親によく似た口調でその女性が言う。
「とにかく上がってちょうだい。」
女性が屋敷の中へと沙那を促すから沙那はその屋敷に踏み込む事になった。
広く薄暗い古い玄関で靴を脱ぎ、薄暗い廊下を抜けて一応陽の当たる客間へと案内を受ける。
「これ…、つまらないものですが…。」
礼儀として沙那が手土産を出すが、理奈によく似た女性は全く見向きもせずに
「理奈は来てないの?沙那さんだけが何しに来たのかしら?」
と沙那に質問を始めた。
「母は…、亡くなりました。」
沙那のその言葉に理奈に似た女性が目を見開いた。
「そう…、理奈が…。」
一応は理奈に何らかの感情があるのだとは感じる。
襖がスルリと開き、そこにはお盆に乗せたお茶を持つ若く綺麗な女性が現れた。
「娘の千恵(ちえ)よ…。私は理恵(りえ)…、理奈の姉で貴女の叔母になるわ。」
理奈に似た女性はやはり理奈の姉であり、お茶を持って来た女性が沙那の従姉妹になる千恵なんだとは理解をする。
しかし、千恵について沙那は少し違和感を感じた。
白い着物に赤い袴を履く千恵は確かに巫女そのものであると思う。
その服装のせいなのか、面持ちは間違いなく沙那に似てはいるが、あまりに美しく、艶やかで儚くも感じる千恵が全くの無表情であるという違和感。