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アゲマン!
第8章 落ち着きのない謎



しばしの微睡みに沙那は龍平に甘えたように龍平の胸板に頭を乗せる。

この人なら…。

自分が求める人になるのかもしれないと予感がする。


「やべぇ…。」


龍平が突然、飛び起きると、まだ足が震える沙那をシャワー室に押し込める。


「何なのよ!?」

「来る時にも言ったろ?このフェリーはこの時間に食いっぱぐれたら朝まで飯抜きだぞ!」

「最っ低!」

「お前のご利益って案外その程度かもな?」

「意外と龍平がダメだからじゃないの。」


こんな龍平だから可愛げのない事を言ってしまう。


「なら、飯が終わったらお前が嫌だって言うほど可愛がってやるよ。」


熱いシャワーの中、龍平がニヤニヤとして沙那に熱いキスを浴びせていた。

バタバタではあったがレストランには終了の30分前に滑り込む事が出来た。

食事の間、沙那は色々と考える。

龍平には間違いなく感じさせられている。

なのに龍平には露骨にラッキーが起きる気配はない。

むしろ、沙那が特別な体質であるというのは勘違いで本当は普通の女の子なのではないかと思ってしまう。

悩む沙那はまたケーキばかりを頬張るようにして食べ続ける。


「よく食えるな?」


3つ目のケーキが沙那のお腹に収まると龍平が呆れた顔をする。


「ケーキは別腹だもん。」


ケーキ以外はサラダしか食べていない沙那に別腹もへったくれもない。

龍平は呆れるが、沙那の恐怖が糖分で和らぐならばと穏やかな笑顔で沙那を見る。

沙那の方はその不意打ちの笑顔に胸がいっぱいになるから食べかけのケーキが喉に詰まりそうになる。

傍目から見れば、気持ちが通じ合ったただのイチャイチャカップルだが、その心の中はまだまだお互いが謎を抱えたままだった。



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