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アゲマン!
第8章 落ち着きのない謎
『1時前には着くよ。迎えに来て!美春に早く会いたい!』
『了解!すぐに八重洲口に向かうね。』
『お願いしまーす。』
そんなやり取りをしてからリンには美春が迎えに来るから護衛は東京駅まででいいと沙那は言った。
「そう…。」
リンは好きにすればという態度で、ほとんど沈黙のまま沙那は東京駅に着いた。
八重洲口まではリンが沙那に付き添い続けた。
「沙那!」
沙那に向かって元気に手を振る美春を見つけると沙那は何故か懐かしさが込み上げて泣きたくなる。
美春とは僅か3日ほど離れただけだ。
その3日でとんでもない体験をした沙那は日常で当たり前の存在である美春にしがみついてしまった。
「沙那!?」
東京駅のど真ん中で泣き出した女が女にしがみつくという醜態にリンは黙って沙那から離れ、美春は沙那に狼狽えるだけだった。
「何があったのか、話しなさい!」
泣きじゃくる沙那を引きずるようにして美春は駐車場に向かい沙那を自分の車に押し込めるや否や叫んでいた。
「だから…えぐっ…フェリーで…ゔぇあっ…龍平がぁ…、川中の…ひぃっぐ…監禁…、千恵…さんが…ゔわぁーんっ…!」
ぐしゃぐしゃの顔で泣く沙那から話を聞くのは至難の技だと理解をした美春は車を発進させて、とりあえずは沙那の家へと向かった。
今は元の気丈な沙那に戻す事が美春の重要な役目となる。
沙那が持って帰った荷物から汚れは洗濯機へと放り込み、沙那が持ち帰った土産をリビングのガラステーブルに並べていく。
沙那が好きなジュースとティッシュの箱とちり箱までを沙那の手元に完全装備を済ませた美春…。
「さぁ!話せ!いくらでも泣いてもいいから全てを話せ!」
鼻息を荒くして迫る美春に沙那は泣いている場合ではないと、ポツポツとだが、この3日間について話をするのであった。