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アゲマン!
第9章 寂しい謎
恐怖はあった…。
その恐怖よりも怒りと嫌悪感の方が強かっただけだ。
川中家でも確かに恐怖は味わった。
その恐怖の裏に巫女として生きると言った千恵の哀しみの方が沙那には辛かった。
真希のような男が居るから千恵のように哀しみの中で巫女を続ける女が居るのだという怒りが沙那には押さえる事が出来ない。
「離して!」
「とにかく、一度、うちに行こう…。君が欲しいと望むものは何でも与えてやるからさ。」
真希がグイグイと沙那の腕を引っ張り、道路の向こうに見える車に連れて行こうとする。
沙那が欲しいもの…。
それは一つだけ…。
龍平の助け…。
「いやっ!助けてー!」
「黙れっ!」
真希が沙那に手を上げた瞬間だった。
「ターゲットを危険な状況と判断をするわ。」
真希が上げた手をリンが真希の背中へと捻り上げて真希を取り押さえていた。
真希の手が沙那の手首から離れ、解放をされた沙那は驚愕の顔をするしかなかった。
「リンさん!?」
真希が呻く。
「誰だ!」
「川中 理奈に雇われた川中 沙那のボディーガードよ。」
リンは冷たく真希に言う。
「離せ!」
そう叫ぶ真希に
「ターゲットに危険がないと判断をすれば離してあげるわ。」
とリンは事務的に答えた。
「彼女には何もしない!」
「あら、そう…。」
パッとリンが真希の捻り上げた腕を離すと真希は慌てるようにして自分の車に乗り込み立ち去った。
「ありがとう…。」
呆然としたまま沙那はリンにそう言った。
「仕事だからよ…。」
淡々と答えるリンだが沙那はそれでも嬉しかった。