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アゲマン!
第9章 寂しい謎
「ボスならクリスマス前に帰って来るわ。」
リンが初めて優しい笑顔を沙那に向けた。
「龍平が?」
「そうよ。Happy holidayだもの。私とロブは本国に帰るわよ。」
「ロブ?」
「川中の家の時に見たでしょ?もう1人の部下を…。」
あまり、はっきりとは見てはいないが大男の黒人というインパクトで沙那も覚えている。
「ボスは休暇を返上して、こっちに来るつもりみたいだから、それまでは悪いけどボスの指示に従って貰うわ…。」
リンがまた仕事の顔に戻る。
リンが事務的だろうとなんだろうと龍平に会えるのならと沙那はコクコクと頷いた。
リンの説明ではこの3週間、龍平からの命令はあくまでも沙那にはわからないように見張れという命令を受けていたらしい。
沙那には出来るだけ、今まで通りの日常を送れるようにしろというのが龍平からの命令だった。
その状況が真希の出現で変わってしまった。
「残念だけど、ボスが来るまでは私と一緒に暮らして貰うわ…。学校の送り迎えも私がする。」
リンが言う言葉を普通の状況ならなら大袈裟だと思うところだが、身内の監禁という経験や今日の真希の出現を考えると沙那には拒否権がないと思う。
「母さんの部屋を使って…。」
リンと暮らす事を素直に認めた。
リンには色々と聞きたい事がある。
口の固いリンだが、優しさを持ち合わせていない訳でもないのだと感じる。
ならば一緒に暮らせば、少しは沙那に龍平の事を教えてくれるのではないかと期待をする。
龍平に対する気持ちが日に日に強まる沙那。
クリスマスまで後、2週間…。
それまでは龍平の命令を受けたというリンの言葉に従おうと沙那は心に決めた。