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夢…獏の喰わぬ夢
第5章 夢の中


階段は上から繋がっているのか、彼女は宙に浮いた階段の一番下に立つ。


見物人の僕が、無様な僕に言う。

「今だ。今お前がすべきことはわかっているだろう?」

正直分からない。
無様な僕は『一番彼女を知っているのはお前だ』と自分に言われた意味が、
今すべきことに繋がっているのだとは理解したが、
何をすべきなのかは見当もつかなかった。

僕は君を知っている。君も僕を知っているだろう!!
僕は彼女の中に僕の記憶があるかを確かめることが、自分のしたいことだと思った。

それは僕のすべきことなのだろうか?

無いはずの階段を駆け上ったのか、瞬間移動したか、
僕の腕は彼女の脚を掴んでいた。

僕を梯子代わりに沢山の人が繋がって彼女にぶら下がっていた。

彼女が僕を見下ろして、
「私は貴方を知らない。」
と答えた。

僕はショックで手を離す。

もう一人の僕は、
「まだ分かってなかったのか。」
と、うなだれながら、僕が地面に叩きつけられるのを防いでくれた。

他の人達は虫の息でありながら、僕に罵声を浴びせる。



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