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夢…獏の喰わぬ夢
第5章 夢の中
「そうにしか見えないだろうね。」
彼女はもっとはっきりとした返事を求めていたのだろう。
その時はそんな細やかなところに気付かない僕だった。
公園で寝転がりながら、夢の話をした。
「貘っているんだろうか?」
それは彼女から訊かれたことだった。
「貘に食べてもらいたいくらい悪い夢をみたのね。」
「君は悪夢から逃げ出したいと思うことはないのか?。」
「まだまだ自由じゃないなぁ。夢を眠っている間に見るものと思っているでしょう。潜在意識が呼び覚ます記憶だという人もいるけど、」
彼女が言うには、
夢は忘れてしまった微かな記憶、忘れられない楽しい思い出や経験、訪れて欲しい未来、避けるべき未来、記憶と経験と希望を織り交ぜた意識の集合体だという。
そして、時間や空間を超え、能力や個々に縛られない可能性を秘めたパラダイスなのだと。
「まるで宇宙みたいだね。始まりの時から永遠まで永久に広がり続けている。」