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夢…獏の喰わぬ夢
第5章 夢の中
部屋について、
僕は、手持ち無沙汰で雑誌を見ていたが、
実は、文字など目に入っておらず、視線は彼女の後ろ姿を追いかけ回していた。
彼女の料理はとても美味しかった。温かいシチューを彼女と向かい合って食べる。
部屋には、一昨日彼女がメモを残した小さなサイドテーブルしかなく、彼女に椅子をすすめ自分はベッドに腰かけて食べた。
楽しいひとときだった。
彼女は食べている間も話し続けていた。
満腹になり一つの欲求がおさまると、必然的にもう一つの欲望が目を覚まし始める。
冷蔵庫にある使わなかった食材は、彼女が明日もここに居ることの証しだと確信していた。
食器を片付けている彼女の後ろ姿を追う僕の視線は、さっきとは違う落ち着きのなさになっていた。
切り出す言葉を探していたが、考えれば考えるほど頭は真っ白になった。
「さて、と…」
彼女が腰に手を当てて振り向いた、まるで主婦みたいだ。