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僕だけの母さん
第3章 再び
「翔ちゃん、ご飯よ♪」

階下から母さんが呼ぶ声がした。

「はーい」

その時、既に2発発射していた僕は若干の疲労感と倦怠感を覚えながら、階段を降りて行った。

「・・?!」

食堂のテーブルに加藤が座っていた。

(まだいたのか?くそっ・・!最悪だぜ!)

心の中で舌打ちしながら、僕は加藤の斜め前に腰を下ろした。

「加藤さんを夕食にお誘いしたの♪どうせお父さんもいないし、加藤さんもこれからどこかに食べに行くって仰るから」

母さんが忙しそうにテーブルに料理を並べながら、加藤を夕食に誘ったと僕に説明した。

「悪いね、お母さんと水入らずのところにお邪魔しちゃって♪」

加藤が少しも悪びれた様子もなく、そう言った。

「あ、いえ・・」

僕は愛想笑いをした。

「お父さん、加藤さんのピンチヒッターで出張に行ったでしょ?ところが、加藤さんの用事が早く済んだからとお詫びにいらしたの。ケーキをいただいたから後でいただきなさい♪」

母さんが僕の隣り、加藤の向かいに座りながら経緯を説明する。

「そうですか、ご丁寧にありがとうございました」

そう言って僕は深々と頭を下げた。

「アハハ、まだ中学生のくせに大したもんだな。将来が楽しみだ♪」

母さんにビールを注がれながら加藤が感心したように僕を誉めた。

(え・・?ちょっと・・母さん、どうしてビールなんか・・) 

驚いた。

誘ったのは夕食だけじゃないのか?

ビールまで振る舞うという事は帰りが遅くなるじゃないか?

僕は横目で母さんに抗議したが、母さんは気付いていないようだった。




ビールを飲んでるせいか、少し顔が赤らんできた加藤がさっきからしきりに母さんを誉めていた。

綺麗だとか、可愛らしいとか、貞淑な奥さんだとか、こんなにお淑やか女性はめったにいないとか、良妻賢母だとか・・

とにかくありとあらゆる褒め言葉を並べていた。

最初の内は母さんも「そんな事ありません」とか「褒め過ぎですよ」と手を振って否定していたのだが、ふと見ると母さんの頬が気のせいかうっすらと赤らんでいるのを僕は見逃さなかった。







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