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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第11章 休息と責任
「大丈夫よ、お仕事だもの」
不機嫌顔ではなく心配顔のサクナに向かって、スグリ姫はにっこり笑いました。

「仕事?」
「ええ。ローゼル様のお家は、会議の一員でいらっしゃるんでしょう?」
「ああ」
「そのお家の大奥様と奥方様の催されるお茶会なら、私にとっては、お仕事よ。私がこのお家に入るのに相応しいかどうか、お会いになって確かめたいのでしょう?」

「…そうとも言えるわね」
「…そうですね、好意的に考えれば」
姫に聞かれたローゼルとビスカスは、曖昧に頷きました。

「それなら尚更、きちんと勤めるわ。そうすることが少しでもサクナのお仕事のお手伝いになるのなら、それは私のお仕事よ」
きっぱり言い切ったスグリ姫を見て、サクナだけでなくローゼルとビスカスも、そしてクロウでさえも、姫から漂う威厳と高貴さを感じました。
鬆が入ってもスイカはスイカ。スグリ姫でも、姫は姫。
立場のあるものとしての振る舞いや責任に対しての覚悟は、姫にとってはごく普通のことでした。そういう意味では、周りの人々は何も心配する必要は無かったのです。

「…そうだな」
姫の気高さに打ち抜かれたサクナは、今すぐ姫を私室に掻っ攫いたいという衝動に駆られました。が、来客中でもありますし、もうすぐ使者も来るでしょう。渾身の努力で衝動を抑え、隣に座る姫の手を恭しく取って手の甲に口付けるに留めました。

「お前はこの先、この家の女主人になる訳だしな」
「!!おんなしゅじんっ…!?」
サクナの言葉を聞いたスグリ姫は、また新たに出現した耳慣れない単語に悶え、いかにもお姫様らしい気高さをあっという間に吹き飛ばしました。
「おい、大丈夫か?」
「だいじょぶ…おんなしゅじんっ…!として頑張る!ぅわっ!?」
「こら!だからお前は急に立つな!!」
「ごめんなさい…又うっかりした…」
女主人としての決意を示そうと立ち上がり、又膝から崩れかけたスグリ姫は、又サクナに抱き止められて抱き付いて抱き締められて、又無意識に二人の世界を醸し出し始めました。

「本当に、大丈夫なのかしら…」
「大丈夫ですかね…」
「大丈夫で御座いましょう…多分…」
クロウはお茶を差し替えようとして、ポットが空なのに気付きました。
「…渋いお茶でもお淹れしましょうか」
クロウは甘ったるくなった空気をしゃっきりさせるお茶を用意する為に、お辞儀して居間から去って行きました。
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