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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
腕に抱えられたドレスは、胸元はクリーム色で裾に向かって徐々に赤味のある色になっていき、裾は濃い紅色になっておりました。遠目には地模様のある生地に見えましたが、よく見ると生地と同色の光沢のある糸で、一面に細かい刺繍が施してあります。
肩からウエストにかけての部分には、地色と同色の刺繍の無い生地に襞を寄せて作った、花びらのような飾りが付いていました。

「まあ…!」
「どうかしら?どう思う?」
「とても素敵だと思いますよ。お召しになってみてはいかがですか?」
「…着てみても、良いかしら?」
姫はドレスが届いたときから着てみたくてうずうずして居たものの、大事な会の前に着て何かあったらと、着るのを躊躇していたのでしょう。バンシルにはそれが手に取るように分かったので、微笑みながら姫の背中を押しました。
「一度お召しになって確認をして置く方が、ご安心だと思いますよ。お召しにならないと分からないことも、ありますでしょう?」
「…そうね!着てみるわ!」
姫は信頼している侍女の言葉に嬉しげに頷いて、部屋着を脱いでドレスを纏い始めました。
この地のドレスはもう何度も自分で脱ぎ着しているので、バンシルの手を借りなくとも一人で着る事ができました。

「着れた!…どう?」
お披露目のドレスを纏った姫は、贔屓目を差し引いても、大変美しく見えました。
ドレスの上品な形、手の込んだ刺繍に彩られた上質な生地、派手すぎず姫の肌や髪や目の色に良く映える色合いは、姫を初々しくも気品のある奥様らしく見せています。
襞飾りは上半身を斜めに飾っていて、女らしい曲線を艶やかに引き立てながらも愛らしさや清楚さを失わぬ、程良いバランスを保っておりました。
「とても、よくお似合いですよ。飾りが上手く利いてますねえ」
襞飾りは、サクナが提案したものでした。
サクナは他にも生地だの色だの袖の長さだのにいちいち口出ししていましたが、ドレスを纏った姿を見ると、点の辛いバンシルでさえそれらの口出しは成功していると認めざるを得ませんでした。

「感じ良いかしら?これを元にして婚礼のドレスを作るって言ってたから、似合ってるなら一安心ね」
婚礼のドレスは、このドレスの形を応用して光沢のある真珠色の生地で作る事になっていました。スカートの部分には薄い生地をふわふわと重ねてボリュームを出し、上半身の襞飾りは、より繊細に作られる予定でした。
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