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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
クロウはスグリ姫の誕生日にサクナが盛装で出席するついでに、姫にもこの地のドレスを贈るように勧めたのです。勧めた理由が「婚礼前に慣れて置く為」だったので、周囲は皆スグリ姫が着慣れない衣装に慣れる為かと思っておりました。しかし実は、蓋を開けてみたら、この地の盛装を纏った姫の姿にサクナが慣れる為…という意味の方が、大きかった様でした。
こうなってみると、助言したクロウは慧眼だったと言うことになります。
…今の所、慧眼が見越したよりも、事態は酷い様では有りますが。
「それにしても、なんで今更そこまで心配なさってんですか?この前お茶会でお召しになったドレスだって十分お似合いでしたし、都での盛装だってお綺麗でしたでしょうに」
「…ああ…そうなんだけどな…」
サクナは決まり悪げに目を伏せました。
「サクナ?」
「何だ」
「何か、有った?」
「…いや」
サクナは自分を見詰めて問い掛ける姫の頭の上に手を置いて、髪を何度か撫でました。そうしているうちに、何か思い出した様でした。
「大丈夫だ。お前が気にする様な事ぁ、何も無ぇよ。それより俺ぁ、お前に相談が有って来たんだった」
「相談?なあに?」
「披露目の会の時、付けて欲しい髪飾りが有るんだが…無理にとは言わねぇ、何も用意してなけりゃで構わねぇし、当日見て断ってくれても構わねぇんだが」
「分かったわ」
「え。良いのか?」
「良いわよ?どうして?」
「どんな物かとか聞かねぇで、そんなにあっさり承諾しちまって良いのか?」
奥歯に物が挟まった様なサクナの物言いとは対照的に、スグリ姫はけろりと言いました。
「良いわよ?サクナのお願いなら、私、頭に果物だって盛るし、木だって生やすし、鳥だって飼うわよ?…それに、髪飾りは、特に何も用意してないわよね?」
姫はバンシルの方を見て尋ね、バンシルは頷きました。
「髪飾りの用意は、しておりませんね。この地ではあまり髪飾りは付けないものと伺っておりましたので…当日髪を結うのは私じゃありませんが、新しい侍女に伝えておきますよ。デイジーは私より上手い位なんで、どんな髪飾りが来ても問題無いでしょう」
「ほら、バンシルもお墨付きだもの。リンゴでも卵でも雛鳥でも、遠慮無く持って来て!」
「…そうか。ありがとな。恩に着る」
サクナは深呼吸して微笑むと、姫の髪に口づけを一つ落としました。
こうなってみると、助言したクロウは慧眼だったと言うことになります。
…今の所、慧眼が見越したよりも、事態は酷い様では有りますが。
「それにしても、なんで今更そこまで心配なさってんですか?この前お茶会でお召しになったドレスだって十分お似合いでしたし、都での盛装だってお綺麗でしたでしょうに」
「…ああ…そうなんだけどな…」
サクナは決まり悪げに目を伏せました。
「サクナ?」
「何だ」
「何か、有った?」
「…いや」
サクナは自分を見詰めて問い掛ける姫の頭の上に手を置いて、髪を何度か撫でました。そうしているうちに、何か思い出した様でした。
「大丈夫だ。お前が気にする様な事ぁ、何も無ぇよ。それより俺ぁ、お前に相談が有って来たんだった」
「相談?なあに?」
「披露目の会の時、付けて欲しい髪飾りが有るんだが…無理にとは言わねぇ、何も用意してなけりゃで構わねぇし、当日見て断ってくれても構わねぇんだが」
「分かったわ」
「え。良いのか?」
「良いわよ?どうして?」
「どんな物かとか聞かねぇで、そんなにあっさり承諾しちまって良いのか?」
奥歯に物が挟まった様なサクナの物言いとは対照的に、スグリ姫はけろりと言いました。
「良いわよ?サクナのお願いなら、私、頭に果物だって盛るし、木だって生やすし、鳥だって飼うわよ?…それに、髪飾りは、特に何も用意してないわよね?」
姫はバンシルの方を見て尋ね、バンシルは頷きました。
「髪飾りの用意は、しておりませんね。この地ではあまり髪飾りは付けないものと伺っておりましたので…当日髪を結うのは私じゃありませんが、新しい侍女に伝えておきますよ。デイジーは私より上手い位なんで、どんな髪飾りが来ても問題無いでしょう」
「ほら、バンシルもお墨付きだもの。リンゴでも卵でも雛鳥でも、遠慮無く持って来て!」
「…そうか。ありがとな。恩に着る」
サクナは深呼吸して微笑むと、姫の髪に口づけを一つ落としました。