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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第1章 ヒイラギと姫君
「周りの囲いも、生きてる木なのね」
姫は、建物だけでなく屋敷囲いまでが都の石造りの街とは随分違うことに、感心しました。
「この木はヒイラギだ。気をつけろ、棘がある」
「ひいらぎ?」
「ああ。こっちじゃ、邪気が家に入らねぇ様に植える、って言われたりしてんな。毒もあるから、間違って食うなよ」
「食べないわよ!…でも」
姫は赤い実を指でつついて言いました。
「棘や毒はあるんだろうけど、素敵な木ね」
「そうか?」
「ええ。葉っぱもつやつやして綺麗だし…冬ってあんまり色が無いから、赤い実が成ってるのって、可愛いわ」
「…そうだな。」
サクナは姫の言葉に、不機嫌顔を崩して微笑みました。
そうして姫の肩を抱き寄せて髪を撫で、中に入るぞ、と言いました。
果物をモチーフにしているらしい、実と葉と枝がデザインされた鉄の門扉を通り抜けてから見ると、屋敷の周りの生垣の内側には、鉄の囲いも巡らせてありました。
「あら?犬?」
どこかから犬の鳴き声が聞こえてくるような気がした姫は、隣を歩くサクナに聞きました。
「犬もいるの?」
「ああ、居るぞ。番犬だから、懐くような犬じゃねぇが…今度紹介してやる」
「うん」
犬に対して紹介、という言葉がなんとなく面白くて、姫はくすっと笑いました。
「外の囲いは果物じゃなかったけど、お庭の木にも果物は無いの?」
門から続く道は石が敷き詰められていて、両脇には淋しい庭がありました。
ところどころ緑の丸い葉の木が植えられているのが僅かな彩りで、下草はほとんど枯れています。この季節だから枯れているのか、それともいつも淋しげなのか、初めてここに来たスグリ姫には、良く分かりませんでした。
「ああ。果物は商品だからな。生垣や庭木なんかには、あんまり使ってねぇな」
「ふーん、そういうものなの…わ!」
門の中の狭い道を歩いた先が急に開けて、広々とした景色が現れました。
「すごい…広ーい…」
今まで狭い所を歩いてきたせいもあるのでしょう。目の前に開けた風景に、姫は目を丸くしました。
聞かされて想像はしていましたが、敷地の中に建物がいくつもあり、畑のようなものも見えます。
どこまで続いているかの果てが良く見えなくて、向こうの方に見えているのは森なのかしら果樹園なのかしらと、姫は頭の中で考えました。
姫は、建物だけでなく屋敷囲いまでが都の石造りの街とは随分違うことに、感心しました。
「この木はヒイラギだ。気をつけろ、棘がある」
「ひいらぎ?」
「ああ。こっちじゃ、邪気が家に入らねぇ様に植える、って言われたりしてんな。毒もあるから、間違って食うなよ」
「食べないわよ!…でも」
姫は赤い実を指でつついて言いました。
「棘や毒はあるんだろうけど、素敵な木ね」
「そうか?」
「ええ。葉っぱもつやつやして綺麗だし…冬ってあんまり色が無いから、赤い実が成ってるのって、可愛いわ」
「…そうだな。」
サクナは姫の言葉に、不機嫌顔を崩して微笑みました。
そうして姫の肩を抱き寄せて髪を撫で、中に入るぞ、と言いました。
果物をモチーフにしているらしい、実と葉と枝がデザインされた鉄の門扉を通り抜けてから見ると、屋敷の周りの生垣の内側には、鉄の囲いも巡らせてありました。
「あら?犬?」
どこかから犬の鳴き声が聞こえてくるような気がした姫は、隣を歩くサクナに聞きました。
「犬もいるの?」
「ああ、居るぞ。番犬だから、懐くような犬じゃねぇが…今度紹介してやる」
「うん」
犬に対して紹介、という言葉がなんとなく面白くて、姫はくすっと笑いました。
「外の囲いは果物じゃなかったけど、お庭の木にも果物は無いの?」
門から続く道は石が敷き詰められていて、両脇には淋しい庭がありました。
ところどころ緑の丸い葉の木が植えられているのが僅かな彩りで、下草はほとんど枯れています。この季節だから枯れているのか、それともいつも淋しげなのか、初めてここに来たスグリ姫には、良く分かりませんでした。
「ああ。果物は商品だからな。生垣や庭木なんかには、あんまり使ってねぇな」
「ふーん、そういうものなの…わ!」
門の中の狭い道を歩いた先が急に開けて、広々とした景色が現れました。
「すごい…広ーい…」
今まで狭い所を歩いてきたせいもあるのでしょう。目の前に開けた風景に、姫は目を丸くしました。
聞かされて想像はしていましたが、敷地の中に建物がいくつもあり、畑のようなものも見えます。
どこまで続いているかの果てが良く見えなくて、向こうの方に見えているのは森なのかしら果樹園なのかしらと、姫は頭の中で考えました。