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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第1章 ヒイラギと姫君
「そうか?都と違って、土地だけはあるからなあ」
サクナはそう言って、びっくりしている姫の頭をぽんぽんと軽く撫でました。
「…あんまり広すぎて、敷地の中で、迷子になりそう…」
「そりゃ大変だ。リボンでも結んどくか?」
姫の髪を一房手に取り口づけたサクナは、迷子になったら困るからな、と指を絡めて手を繋ぎました。
「あっちが屋敷だ。それ以外は家業の畑やなんかだから、普段お前にゃあんまり用は無ぇ場所だろうが…迷子にならねぇ程度には、憶えてくれると助かる」
「そうよね。うろうろしてたら、お仕事してる皆さんのご迷惑だものね」
姫が、がんばる!と繋いでいない方の左手で拳を作ると、サクナは苦笑いしながら繋いだ手を軽く持ち上げて、薬指の指輪に口づけました。
「迷惑って訳じゃ無ぇぞ。俺が勝手に、お前を心配してぇだけだ」
「サクナ様」
二人がきゅっと手を握り合って顔を合わせて微笑んでいると、後ろから声が掛かりました。
「お帰りなさいませ、サクナ様」
「ん?…ああ、お前らか。今戻った」
(うわあ!綺麗なお姉さん…!!!)
声を掛けられて不機嫌そうに振り向いたサクナの視線の先を見ると、姫より少し年上に見えるすらりとした大変美しい女性と、年嵩にも若くも見える年齢不詳の愛嬌のある顔をした小柄な男性が、二人でこちらに歩いて来ておりました。
「ほー。こちらが、お噂の姫君で?」
「ビスカス、じろじろ見んな。減る」
サクナは繋いだ手を引いて、姫を自分の後ろに隠すようにして、姫の前に立ちました。
「減りゃあしませんでしょ。スグリ姫様ですよね?こちらで働かせて頂いております、ビスカスと申します」
ビスカスが、どうぞお見知り置きを、とお辞儀をしてにっこり笑うと、目が糸のように細くなって目尻に皺が寄り、愛嬌のある顔が更に愛嬌を増しました。
「不躾ですみません。あんまりお可愛らしい方だったもんで、つい目が釘付けになりまして」
「まあ!」
初対面の殿方にお可愛らしい、といわれた姫は、ぽっと頬を染めました。
「…こいつの言うことなんざ聞くな、スグリ。耳が汚れる。人の大事な嫁にちょっかい掛けてんじゃねぇよ、ビスカス」
初めて会った知らない人の前でサクナに「大事な嫁」と言われて、姫は、ますます真っ赤になりました。
サクナはそう言って、びっくりしている姫の頭をぽんぽんと軽く撫でました。
「…あんまり広すぎて、敷地の中で、迷子になりそう…」
「そりゃ大変だ。リボンでも結んどくか?」
姫の髪を一房手に取り口づけたサクナは、迷子になったら困るからな、と指を絡めて手を繋ぎました。
「あっちが屋敷だ。それ以外は家業の畑やなんかだから、普段お前にゃあんまり用は無ぇ場所だろうが…迷子にならねぇ程度には、憶えてくれると助かる」
「そうよね。うろうろしてたら、お仕事してる皆さんのご迷惑だものね」
姫が、がんばる!と繋いでいない方の左手で拳を作ると、サクナは苦笑いしながら繋いだ手を軽く持ち上げて、薬指の指輪に口づけました。
「迷惑って訳じゃ無ぇぞ。俺が勝手に、お前を心配してぇだけだ」
「サクナ様」
二人がきゅっと手を握り合って顔を合わせて微笑んでいると、後ろから声が掛かりました。
「お帰りなさいませ、サクナ様」
「ん?…ああ、お前らか。今戻った」
(うわあ!綺麗なお姉さん…!!!)
声を掛けられて不機嫌そうに振り向いたサクナの視線の先を見ると、姫より少し年上に見えるすらりとした大変美しい女性と、年嵩にも若くも見える年齢不詳の愛嬌のある顔をした小柄な男性が、二人でこちらに歩いて来ておりました。
「ほー。こちらが、お噂の姫君で?」
「ビスカス、じろじろ見んな。減る」
サクナは繋いだ手を引いて、姫を自分の後ろに隠すようにして、姫の前に立ちました。
「減りゃあしませんでしょ。スグリ姫様ですよね?こちらで働かせて頂いております、ビスカスと申します」
ビスカスが、どうぞお見知り置きを、とお辞儀をしてにっこり笑うと、目が糸のように細くなって目尻に皺が寄り、愛嬌のある顔が更に愛嬌を増しました。
「不躾ですみません。あんまりお可愛らしい方だったもんで、つい目が釘付けになりまして」
「まあ!」
初対面の殿方にお可愛らしい、といわれた姫は、ぽっと頬を染めました。
「…こいつの言うことなんざ聞くな、スグリ。耳が汚れる。人の大事な嫁にちょっかい掛けてんじゃねぇよ、ビスカス」
初めて会った知らない人の前でサクナに「大事な嫁」と言われて、姫は、ますます真っ赤になりました。