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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第2章 鳥と猫
「これは、紅茶とは違うお茶ですね?美味しゅうございますね」
この家の当主が婚約者を連れて居間を去ったあと。
残された家令と侍女は、先程とは別のお茶を淹れ替えて静かな午後を楽しんでおりました。
「お褒め頂き、有難うございます。これは薔薇の実のお茶でございます」
「それは、珍しいこと…こちらでは良く飲まれるのですか?」
「いいえ。当地でも珍しい部類に入るものでございます」
「それは、貴重なものを…」
ありがとうございます、とバンシルが告げると、バンシルと共に主不在の居間に残ってお茶を楽しんでいたクロウは、どう致しましてと頭を下げました。
「ところで、クロウ様?」
「はい。何ですかな?」
「スグリ姫様の母君であり、私の主でもある王妃様からのご伝言がございます。『先日は遠路遥遥のご訪問、有難うございます』とのことです」
「はて…?私はこの家に仕える者でございます。この家を離れたことはございませんが」
薔薇の実は固いので、お茶を二煎飲むことが出来ます。
クロウはバンシルから王妃様の伝言を聞きながら、顔色ひとつ変えずに、薔薇の実に二煎目のお湯を足しました。
「ええ、それは承知しておりますわ。ただ、家令様にそのようにお伝えして置くように、と。それから、」
二煎目のお茶は出辛いため、長めに蒸らさねばなりません。
蒸らす時間を見ていたクロウは、バンシルの言葉の続きを待ってから、お茶をカップに注ぐことしました。
「スグリ姫様の今回のご訪問に関して何かございますようでしたら、私が王妃様の名代で参ったと思ってくださいな。」
「バンシル様。重ねて申しますが、私はこの家に仕えるものでございます。この家に益あることは私にとっては是、そうでないことは非でございます。」
お茶を注ぎ分けながら、クロウは言いました。
「私は、現在の当主は、我が家にとって得難い財産であると存じております。前当主に勝るとも劣らない、」
バンシルにお茶を勧め、自分も一口飲みました。
「当主が財産であるのですから、当主の伴侶もまた財産なのです。但し、曇りの無い目で選んだ伴侶であるならばですが…。スグリ姫様が当主に相応しい伴侶であるかどうかに関しては、既に決着しております。故に、あなた様方の御心配はご無用に願います…バンシル様、ツグミ王妃様」
「はっ!」
突然部屋にばさばさと羽音がして、小鳥のような声が響きました。
この家の当主が婚約者を連れて居間を去ったあと。
残された家令と侍女は、先程とは別のお茶を淹れ替えて静かな午後を楽しんでおりました。
「お褒め頂き、有難うございます。これは薔薇の実のお茶でございます」
「それは、珍しいこと…こちらでは良く飲まれるのですか?」
「いいえ。当地でも珍しい部類に入るものでございます」
「それは、貴重なものを…」
ありがとうございます、とバンシルが告げると、バンシルと共に主不在の居間に残ってお茶を楽しんでいたクロウは、どう致しましてと頭を下げました。
「ところで、クロウ様?」
「はい。何ですかな?」
「スグリ姫様の母君であり、私の主でもある王妃様からのご伝言がございます。『先日は遠路遥遥のご訪問、有難うございます』とのことです」
「はて…?私はこの家に仕える者でございます。この家を離れたことはございませんが」
薔薇の実は固いので、お茶を二煎飲むことが出来ます。
クロウはバンシルから王妃様の伝言を聞きながら、顔色ひとつ変えずに、薔薇の実に二煎目のお湯を足しました。
「ええ、それは承知しておりますわ。ただ、家令様にそのようにお伝えして置くように、と。それから、」
二煎目のお茶は出辛いため、長めに蒸らさねばなりません。
蒸らす時間を見ていたクロウは、バンシルの言葉の続きを待ってから、お茶をカップに注ぐことしました。
「スグリ姫様の今回のご訪問に関して何かございますようでしたら、私が王妃様の名代で参ったと思ってくださいな。」
「バンシル様。重ねて申しますが、私はこの家に仕えるものでございます。この家に益あることは私にとっては是、そうでないことは非でございます。」
お茶を注ぎ分けながら、クロウは言いました。
「私は、現在の当主は、我が家にとって得難い財産であると存じております。前当主に勝るとも劣らない、」
バンシルにお茶を勧め、自分も一口飲みました。
「当主が財産であるのですから、当主の伴侶もまた財産なのです。但し、曇りの無い目で選んだ伴侶であるならばですが…。スグリ姫様が当主に相応しい伴侶であるかどうかに関しては、既に決着しております。故に、あなた様方の御心配はご無用に願います…バンシル様、ツグミ王妃様」
「はっ!」
突然部屋にばさばさと羽音がして、小鳥のような声が響きました。