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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第2章 鳥と猫
「やっぱりあんた、食えない奴だったわね!」
「…王妃様。」
バンシルは小鳥を見て、出て来ないと約束したのに、と溜息を吐きましたが、現れてしまったものは仕方ありません。
バンシルに取り持たせて小鳥の体を借りた王妃は、バンシルの差し出した手に止まると、ちちち、と鳴いてから言いました。

「あんた、家付きなの?どうしてこんな田舎に燻ることになったの?」
「ご心配同様、詮索もまたご無用で御座います、ツグミ様。それに、この地は田舎では御座いません」
失礼極まりない言葉を吐いた小鳥に、クロウは丁重に断りを入れました。

「あら、それは大変失礼致しましたこと。…ま、娘の敵にならなけりゃ、他の事はどうでも良いのよ。あんた、ウチに『猫』を寄越したでしょう?ここから離れられないのよね?ってことは、ほんっとにこの家に身を捧げたのねえ」
小鳥は、辺りを見回しました。

「城に『猫』が無断進入したのも、ウチの婿殿の為だったし。しょうがないから水に流したげる」
「有難う御座います。王妃様も当家の若奥様の為にわざわざのお越し、傷み入ります。お互い水に流すのがよろしゅう御座いましょう」
「は?誰が王妃?これは鳥よ、鳥。あんたと違ってどう見ても鳥でしょ。見て分かんないかしら、ダドリーちゃん」
鳥はぴぴっと鳴くと、横を向いてバンシルに言いました。

「バンシル。ってことみたいだから、こいつ放っといて良いわよ」
「承知いたしました。」
「むしろ、何か困ったらこいつに相談なさい。きっと助けてくれるわ、『家の為』になることならね」
家令は無言で肩をすくめました。

「あとは…大丈夫そうね。厄介な爺共が居るみたいだけど、人生そのくらいの刺激は必要よ」
小鳥は辺りを見回すように、くるっと首を回しました。
「あらまあ、着いた早々お熱いこと。スグリたちがいっちゃいっちゃしまくってて鬱陶しいでしょ。ごめんなさいね、バンシル」
「…毎度のことでございます。」

「随分と下世話な王妃様でございますねえ」
鳥とバンシルの会話を聞いて、家令が呆れたように言いました。
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