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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第4章 花と果物
「どなたとどんなお付き合いがあっても知ったこっちゃ有りませんが、姫様の周りに、棘も毒も寄せ付けないで下さいね。ここに嫁がせるだけで、もう十二分に余計な重荷を背負わせなすったんですから、これ以上の負担を掛けるのはお断り致します。家令様の真似ではありませんけど、私もお后様も、姫様の益になることは是、そうでないことは否であることを、くれぐれもお忘れなく」
「前も言っただろ。スグリは家業にゃ触らせねぇよ」
暗くなったな、と呟いたサクナは火をつけるための道具を取り出して、手際良く灯りを点しました。
「邪推する奴らは色々言うだろうが、あいつを嫁にするのは俺と一緒に居て欲しいからで、ただそれだけだ」
「逆に言うと『それ以上のことはするな』ってことですか?」
「バンシル。お前にゃ分かるだろうが、人にゃあ向き不向きってもんがある。スグリがお前なら、仕事を手伝って貰っただろうよ。だが、あいつはあいつだ。それに、スグリがお前みてぇなら嫁にゃあして無え」
サクナは果物を盛った鉢から、リンゴをひとつ選び取りました。
「あいつは極上の果物みたいな奴だ。果物は自分じゃ何もしねえ。 自分の食べ頃も分からねぇし、自分を守ること出来ねえ。 ただ咲いて、香って、蜂を寄せて実って、誰かに面倒を見させて、熟れたら誰かが収穫する。あいつも同じだ」
そう言いながらナイフを出して、手とナイフを手巾で拭い、リンゴをするすると剥きました。
「あいつは、俺があいつの見て無いとこで何やってるかなんて、知らなくて良いんだよ。あいつの仕事は俺に愛でさせる事だけで充分すぎるほど充分だ」
「…なかなかに最低な言い草ですね」
食うか?と差し出されたリンゴを、頂戴しますと一切れ貰って親の仇であるかのように齧ったバンシルは、一瞬びっくりした顔で固まりました。
そして、もっと食うかと皿を再び差し出され、無言でもう一切れフォークで差して、にやにや見ているサクナを睨みつけました。
「前も言っただろ。スグリは家業にゃ触らせねぇよ」
暗くなったな、と呟いたサクナは火をつけるための道具を取り出して、手際良く灯りを点しました。
「邪推する奴らは色々言うだろうが、あいつを嫁にするのは俺と一緒に居て欲しいからで、ただそれだけだ」
「逆に言うと『それ以上のことはするな』ってことですか?」
「バンシル。お前にゃ分かるだろうが、人にゃあ向き不向きってもんがある。スグリがお前なら、仕事を手伝って貰っただろうよ。だが、あいつはあいつだ。それに、スグリがお前みてぇなら嫁にゃあして無え」
サクナは果物を盛った鉢から、リンゴをひとつ選び取りました。
「あいつは極上の果物みたいな奴だ。果物は自分じゃ何もしねえ。 自分の食べ頃も分からねぇし、自分を守ること出来ねえ。 ただ咲いて、香って、蜂を寄せて実って、誰かに面倒を見させて、熟れたら誰かが収穫する。あいつも同じだ」
そう言いながらナイフを出して、手とナイフを手巾で拭い、リンゴをするすると剥きました。
「あいつは、俺があいつの見て無いとこで何やってるかなんて、知らなくて良いんだよ。あいつの仕事は俺に愛でさせる事だけで充分すぎるほど充分だ」
「…なかなかに最低な言い草ですね」
食うか?と差し出されたリンゴを、頂戴しますと一切れ貰って親の仇であるかのように齧ったバンシルは、一瞬びっくりした顔で固まりました。
そして、もっと食うかと皿を再び差し出され、無言でもう一切れフォークで差して、にやにや見ているサクナを睨みつけました。