この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
嫌がらせ
第1章 嫌がらせ
「……俺のせいか」
父はじっと身を硬くして、下を向いていた。
「え?」
「俺が、お前に手術を勧めたから……」
私は絶句した。まさか、父がそんな負い目を感じていたとは。
確かに、手術の話が出たときには、父に相談した。というか、父以外には誰にも話していない。
実際、とても一人で決断できるような問題ではなかったから。
父は手術を勧めた。が、それはあくまで父の意見であって私の意見ではない。
それに父は、こうも言っていたのだ。
自分は女じゃないから、子宮を失う辛さを、子供が産めない苦しみを、分かってやれない。だから俺の意見は無視していい。お前がどっちを選ぼうとも、俺はお前の意見を尊重する、と。
「すまない」
「いや、違うってお父さん……。最終的には、私が手術するって決めたから」
だから、そんなに自分を責めないでよ、と言おうとした────
「ただもう、俺は失いたくなかったんだ」
悲痛に満ちた声。父の肩はぶるぶると震えていた。
「これ以上」
私は、何も言えなくなった。
「お前まで失うのかと思うと、たまらなく怖かったんだ」