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イかせ屋…2
第10章 その男、イかせ屋につき…
あの日、私と植草君が居るところを見た昌さん。
ただの立ち話だとはわかってた。
それでも昌さんは落ち着きを失くし、仕事中にやらかしたらしい。
イライラとして仕事に行き、よりにもよって食事中にぼんやりとしてお客様の着物に赤ワインを零した。
「お陰で初音を呼ぶ羽目になった。」
昌さんが嫌な顔をする。
元々、親分様や昌さんが着る着物のクリーニングやメンテナンスは全て初音さんの家である呉服屋さんに依頼をしてるからだ。
その時も緊急で初音さんに頼むしかなかった。
東京に呼び出された初音さんが出した条件が東京案内だった。
スカイツリーに行きたいという初音さんに嫌味ばかり言うデートだったと昌さんが言い訳する。
そして、私に後ろめたくて私の部屋に近寄れなくなった昌さんは親分様に叱られる。
叱られたら、ますます私に近寄れなくなったとお馬鹿な昌さんがイジケる。
「どんだけお馬鹿さん?」
「うっせぇな、どうせ俺は馬鹿だよ。」
拗ねてるのに私にしがみついて離れようとはしない昌さんに笑いたくなる。
「本当に馬鹿だと思う。」
「馬鹿でも梓とは居たいんだよ。カッコ悪いけど梓が他の男を見るのは嫌なんだよ。それなのにイかせ屋って風俗を辞める勇気のない俺は本当に最低な男だとわかってる。」
ただ昌さんの頭を撫で続ける。
つまらないヤキモチでお互いが自分を見失うほど愛し合ってるのに、話し合えてないから絆が薄かったのだと感じる。
私も昌さんも弱い人間だとやっとわかった。
私の為にならイかせ屋を辞める決心をする昌さん。
だからといって本当に辞めさせたら千年以上の歴史に今度は弱い2人がその後悔に押し潰されるだろう。
我が子には強くあって欲しいと願う。