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イかせ屋…2
第3章 その男、絶対的につき…
かなり目立たないが民家の入り口に表札とは違う看板がちゃんとかかってる。
京都に不案内な人だと表から見ただけでは何のお店なのかの判断も難しい。
修学旅行でバスガイドさんが教えてくれた町屋で扇子をお土産に買った記憶が蘇る。
そんな町屋の一軒の木戸を昌さんが開けて私を連れて入ってく。
木戸の向こうは木の壁に囲まれた石畳の細い小道が奥へと伸びる。
『うなぎの寝床』っていうのだっけ?
バスガイドさんの言葉を思い出しながら、その小道を昌さんと進む。
突き当たりの暖簾を潜り、タタキと呼ばれる通路を少し行くと初めてそのお店の正体が見えて来る。
「呉服屋さん?」
昌さんに確認する。
タタキから一段上がった座敷の部屋の壁には幾つもの戸棚があり、その戸棚に反物が山のように積まれてるからだ。
「梓の着替えが必要だからな。」
昌さんが穏やかな笑顔を私に向ける。
着替えって…、今日、着物を注文をしても出来上がるのは1週間から2週間は先でしょ!?
そう叫ぶ前に空色の着物を着た綺麗な女性が現れる。
「あら?昌…、いらっしゃい。」
その女性は綺麗な微笑みを昌さんに向ける。
誰!?
ちょっと警戒心が出ちゃう。
「初音(はつね)、預けてある物を取りに来た。梓に着せてやってくれ。」
昌さんがその人にそう言った瞬間、綺麗な顔が歪み私をキッとその人が睨む。
「ちょっと…?昌、本気なの!?」
「当然だ。梓は俺の嫁になる女だ。」
「そんな…。本家は知ってるの?」
何やら2人が揉めてるという事だけはわかる。
「初音、俺が梓の為に出せと言ってるんだ。」
昌さんが厳しい顔をした瞬間、その初音と呼ばれる女性は下唇を噛み締めるようにして口を閉じる。