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イかせ屋…2
第3章 その男、絶対的につき…
この段階で私にわかるのは、彼女も昌さんの身内であるという事だ。
よくはわからないが曽我家では家族の全員が昌さんを馬鹿にはするけれど昌さんには絶対に逆らわないという習慣を持ってる。
お父様である親分様ですら最後は必ず
「昌の好きにしろ。」
と言って昌さんの意見には逆らわない。
彼女が昌さんの言葉に顔色を変えて従うのなら間違いなく彼女は身内だと感じる。
「ついて来て…。」
不機嫌に初音さんが私に言う。
昌さんはニコニコとして私を送り出す。
私は心細い思いで初音さんと共に、この店の更に奥にある暖簾を潜り、この町屋の奥へと突き進んだ。
小さな中庭が見える狭い座敷に通される。
「少し待ってて…。」
そう言うと初音さんが居なくなり、しばらく1人で待つ事になる。
知らない街、知らない家。
迷子な気分になっちゃう。
途中で中年の女性が現れて、お盆に乗せたお茶と和菓子を私に出すとすぐに消える。
美味しそうで、とっても綺麗な紅葉の形をしたお茶菓子だけど、ここは私にとって不思議の国になるのだから食べたら自分の身体が小さくなり2度と昌さんのところに帰れないかもと妄想する。
「待たせたわね。」
初音さんの冷たい声がする。
今度は作務衣を着た中年の男の人を連れてる。
「ここに座って…。」
部屋の隅にある鏡台の前の小さな椅子に座らされると男の人が櫛を取り出し私の髪を結い始める。
「昌とは…、いつから?」
初音さんが冷たい声で聞いて来る。
その目付きと声は昌さんの兄である昊さんにそっくりだと感じる。
昊さんの対応には慣れてる。
「夏からです。」
「そんな短い付き合いで昌は結婚を決めたの?」
「ええ、昌さんが是非にと言われるから、ちょっと困ってるくらいなんです。」
嫌味たっぷりに言い返す。