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イかせ屋…2
第4章 その男、弱い生き物につき…
ホテルのカフェでのんびりと朝食を済ませる。
久しぶりに見る太陽は黄色くなく穏やかで平和な朝を噛み締めてしまう。
着物を着た優雅な女が古都京都の街で静かにコーヒーを飲む。
これぞ学生時代に憧れてた生活!
本当にそれをやってる自分に少し驚きも感じる。
少し厳ついけどカッコよくて優しい恋人との優雅な暮らし…。
私は夢の国の梓…。
「そろそろ行こうか?」
穏やかな笑顔で昌さんが私に手を差し伸べる。
その手を確実に掴む為にも学ばなければならない事がたくさんある。
気合いを入れ直す。
ホテルを出て昌さんと昨日と同じリムジンに乗る。
今日のリムジンは京の街の街外れへと向かう。
大きなお屋敷が並ぶ住宅地。
その中でも一際大きなお屋敷の前でリムジンが静かに停まる。
やはり曽我の家のような立派な日本家屋。
曽我のお家に見慣れてて良かったと思いホッと胸を撫で下ろす。
でないと田舎者みたいに口をポカーンと開けるという醜態を私は晒すに決まってる。
まあ、実際私は田舎者ですけれど…。
余計な事を考えると凹みそうになるから首を振って雑念を払う。
「行っておいで…。」
昌さんがそう言う。
「昌さんは来ないの!?」
思わず驚愕する。
「仕事があるんだ…。」
昌さんの言葉にムッとした。
仕事…、彼の仕事はイかせ屋…。
京都に来てまでイかせ屋の仕事をするつもり!?
疑いの目で昌さんを睨む。
昌さんがクスクスと笑う。
「イかせ屋だけどイかせ屋の仕事じゃない。」
それだけを言うとリムジンから私を下ろし、この立派なお屋敷の前に私だけを残した昌さんはリムジンで走り去ってしまった。
お屋敷の立派な門には『藤原』と書いた立派な表札がかかってる。
ずっと立ち往生をしてても仕方がないとため息を吐くと戸の横にある呼び鈴を押してた。