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イかせ屋…2
第4章 その男、弱い生き物につき…
「若い女性がそんな顔をしてるのに、黙って見てはいられない。」
そう言うと清太郎さんはふわりと私の顎を包むように両手を添えて、優しく私の顔を上げさせる。
ズキューン!
このおじ様となら恋に堕ちてもいい!
そんな馬鹿な事を考えてしまうくらいの素敵な笑顔に優しい仕草。
やばい…。
私ってイかせ屋の男に弱い体質なのかも!?
「手土産を忘れたのです…。申し訳ございません。」
慌てて頭を下げて清太郎さんから少し離れる。
昌さんのようにクスクスと清太郎さんが笑う。
「なんだ…、そんな事。そんな事を梓さんにさせたら末代までの恥だよ。ここはイかせ屋の本家。女性につまらない気を使わせるなんて以ての外だ。」
清太郎さんは力強くきっぱりと言う。
女性が絶対優先のイかせ屋。
徹底をした紳士ぶり…。
だから、わざと昌さんは私に手土産を持たせなかった。
それがわかるから驚くしかない。
昌さんと同じ、いや、それ以上の男の人がもう1人この世に存在するなんて!?
驚く私の背中に軽く清太郎さんが手を添える。
「では、梓さんにイかせ屋の歴史を僅かばかし垣間見て貰うとしょう。」
清太郎さんに促されるようにして真っ白な壁の蔵の扉の前へと立たされる。
不思議の国へ私を案内する兎のように清太郎さんが見えて来る。
ギギィィ…
ゆっくりと蔵の重い扉が開かれる。
薄暗い中…。
清太郎さんが蔵の中から窓を開ける。
緊張した割には意外と普通の蔵だった…。
「暗くないかな?」
清太郎さんが聞いて来る。
「はい、大丈夫です。」
薄暗いけれど暗いというほど暗くはなく、蔵の中がはっきりと見える。
壁際に木で出来た戸棚が幾つかあり、そこには古そうな本や巻き物がズラリと並んでる。