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イかせ屋…2
第7章 その男、寛容につき…
でも、私には行く場所なんかない。
この家には跡継ぎじゃない私の居場所なんかない。
今すぐにでも昌さんの居るホテルに行きたいと思う。
明日は昌さんのお誕生日なのに…。
私は惨めな気分のまま居場所のない実家で泣くしか出来ない。
この実家にも一応、縁側がある。
曽我家に比べると大した縁側じゃない。
洗濯物を干す小さな庭に面した縁側。
洗濯物の向こうに広がる畑と田んぼ…。
畑には豆粒くらいのお父さんが見える。
その縁側で膝を抱えて泣く。
祖母に嫌味を言われるたびにお父さんが助けてくれないかと期待してこの縁側で仕事をするお父さんを見ながら泣いた。
今もそこしか私の居場所がないと思う。
いつの間にかわかちゃんが私の横に座る。
この場所ももうわかちゃんのものだって事?
ますます悲しくなって来る。
「あたしさ…、結婚する前も結婚してからも、ずーっと梓ちゃんの事が嫌いだったの。」
わかちゃんがそんな事を言い出す。
はぁ!?
あなたまで私に喧嘩を売るのですか?
そう思ってわかちゃんを見る。
わかちゃんは笑ってる。
何なの?
そう思う。
「正広さんもお義母さんもいつも梓ちゃん自慢ばかりなの…。あたしがなんかやっても『梓なら、そんな失敗はしない。』とか『梓なら、その程度はすぐに出来る。』とか言われ続けて来たのよ。」
わかちゃんが笑いながら愚痴を零す。
なら、兄とお母さんにその文句を言ってよ。
ため息が出る。
「この家じゃ、梓ちゃんは自慢の娘。大学まで行った頭のいい、お洒落な自慢の娘。だからあたしは梓ちゃんなんか、さっさと嫁に行けばいいのにって毎日思うだけだった。」
「そうなの?」
「だって、あたしは頭は悪いし、畑仕事しか出来ないもの。だから風太が生まれた時に初めて梓ちゃんに勝ったとか思った。この家の跡継ぎは梓ちゃんには産めないもんね?」
なんか…。
わかちゃんの笑顔に呆れちゃう。