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イかせ屋…2
第7章 その男、寛容につき…
「でもね。お父さん…、誰かに言われたからお嫁に行くんじゃないの。私が行きたいから昌さんのところにお嫁に行くの…。」
私なりにお父さんに気持ちを伝える。
「大事にしてくれるのか?」
不安そうなお父さん…。
田舎者だから都会は怖い所だとしか思ってないお父さん。
「この着物は昌さんのお母様の着物。お母様が亡くなってるから全て私が頂いたの。今は仕事を辞めて昌さんのお父様とケーキを食べてお茶をするのが楽しい毎日なの…。」
「ケーキ?」
「そうだよ、私が自分で作るの。だから、明日は昌さんのお誕生日だから、本当は昌さんにケーキを焼いてあげたかったのに、昌さんが私の実家の方が大切だって言うから来たんだよ。」
「そりゃ、悪い事したなぁ…。」
お父さんがポリポリと頭を掻く。
「苺はある?」
「ハウスに早咲きの分が少しあるが…、味はまだ保証が出来んぞ。」
「少しちょうだい。」
「なら、母さんにご馳走を作らせるから明日、また来て貰え…。」
お父さんがそう言うとビニールハウスへ向かう。
家に戻り、次は兄と話す。
「お父さんが昌さんの結婚を認めてくれるみたい。」
「そうだろうな。父さんって昔っからお前の味方でお前だけを甘やかしたからな。」
兄がそんな嫌味を言う。
「それは正兄ぃの方でしょ?おばぁちゃんに甘やかされて来たくせに…。」
「その分、父さんはお前だけだった。俺にはノートも鉛筆も自分の小遣いで買えって言うくせに、父さんは梓はちゃんと勉強をする子だからって、すぐにノートも鉛筆も買って来たろ?」
言われてみればそうだった。
老人会でおばぁちゃんが家に居ない時はお父さんが私の為にとシュークリームを買って来て
「正広には内緒だぞ。」
と笑ってた時もある。