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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第14章 それは秘密では有りません
「これが基本だ。入れる分量も書いてある……が、同じにしても詰まんねぇだろ。好きに足し引きして良いぞ」
「好きにって……よく分かんねーですよ……」
「分かんねぇか。じゃあ、お前の良く知ってる人間を、誰か一人決めろ」
「へ?」
「基本の配合を半分にして入れた後、そいつを頭に思い浮かべて、混ぜ終わった瓶の匂いを嗅いでみろ。何か足りねぇ気がしたら、足りねぇと思った物を足せ。ここに有るのは、甘い、辛い、涼しい、温かい、渋い、酸っぱい、爽やか……みてぇな匂いの元だ。ちょっとずつ足せよ。入れすぎたら、オレンジの香りが消えちまう」

 誰か一人決めて、そいつに合わせて、調合する。そんな方法が、有るんだねー。サクナ様がスグリ様に差し上げる奴ぁ、きっとスグリ様に合わせてんだろうね。
 でも、俺の場合は贈る為に人を選ぶ訳じゃ無くて、調合の為に選ぶんだよな。それじゃあ、絶対贈れねー奴を選んでも、別に構わねぇって事ですね。
 俺はサクナ様に教わりながら、香辛料を計ったり、潰したり、混ぜたり、匂いを確かめたりを繰り返して、基本の配合の半分を混ぜた。

 で、いよいよ、足してく事になった。
 ……甘くて辛くて涼しくて、時々渋くて根っこはあったけぇ、オレンジの似合う誰か。
 何故か分からねぇが、香辛料を足す度に、目を閉じて匂いを嗅ぐと頭に浮かぶ色が変わる。
 俺は、何かを足しては、最初に頭に思い描いた、燃える様に鮮やかなオレンジを追った。なかなか、ぴったりの色にならねえ。
 最後に僅かに渋い香りを加えたら、ゆらゆら揺らいでいた濃い黄色が、すうっと芯が通るみてぇにオレンジになって、思い描いた誰かの姿が、向こう側に淡く浮かんだ。

「……出来やした」
「どれどれ」

 サクナ様は俺が香辛料を入れ終えた瓶の匂いを嗅いで、驚いた様な顔をした。

「……お前……玄人が思い付かねぇ様な混ぜ方したな……」
「へ?そうですか?」

 そう言われても、初めてで何も分からず、無我夢中でやった事だからねー。

「入れた分量、書き留めてるか?」
「へい、言われた通りに」

 最初に、基本を半分にした物に何か足す度に書き留めろ、と言われていた。作業しながら書いたんで読み難い事この上無ぇが、一応分かる事ぁ分かる。
 サクナ様はそれにざっと目を通して、うーん、と唸った。
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