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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第14章 それは秘密では有りません
●月●日
今日は、サクナ様に呼ばれて、柊屋敷に向かってる。前に切らせて頂いたオレンジの干した奴を買い取って下さる代金を、受け取りに来てくれって言われたんだよな。
屋敷を囲んでる柊の、艶のある緑の葉っぱと赤い実が、寒々しい枯れた景色の中で鮮やかだ。
前に来た時にゃあ、もう少し他にも緑が残ってたんだがな。
俺はすっかり淋しくなった景色と、自分の身の上を重ね合わせた。
* * *
「おおおおお……これ、本当に俺が作った奴ですかい……」
「そうだ。お前が切って並べたオレンジだぞ」
この前。
干し上がったから来いと言われてやって来た厨房で見せて貰ったオレンジは、腐りもせず、ミイラにもならず、ちゃんと干し果物になっていた。
……奇跡か!
いやいや。前回、「無理だと思うのを止めろ」って言われたんでした。やれば出来たんですねー、俺。
思わずお嬢様に献上したくなったが、こいつぁただの切ったオレンジじゃなくて、干し果物になっちまってるからねー。結婚前の大事な時期のお嬢様にお贈りしちまって、変な意味に取られちゃいけねぇよ。やっぱり、サクナ様とスグリ様にお願いしといた方が良い。お二人に渡んのが、一番だ。
「おい。ぼーっと見てんな。これで仕舞いじゃ無ぇぞ」
サクナ様はオレンジを見ているだけの俺の前に、何やらが入った瓶を、いくつか並べた。
「何ですか、こりゃ」
「香辛料だ。風味付けと腐敗防止に使うんだ。なかなか高価なもんだから、慎重に扱えよ」
「へー……これが……」
香辛料は、何かに入って形が分からねー様になってる奴は知ってるが、元々の姿なんざ見た事も気にした事も無え。
俺は瓶の中の丸めた木の皮みてーな奴やら釘みてーな奴やら種のデカいのみてーな奴やら葉っぱみてーな奴やらを、しげしげと眺めた。
「それ、蓋ぁ取って匂ってみて良いぞ」
「へえ……うわわ」
蓋を開けた瓶の木の皮から、えれぇ甘ぇ匂いがした。他の瓶からもそれぞれに、目が覚める様な匂いだったり、眠くなる匂いだったり、何か焦がしたみてーな匂いだったり、いろんな匂いが漂った。
「匂いって、いろいろ有んですねー」
「面白ぇだろ。使う量で全然感じが変わったり、混ぜると互いに引き立て合ったりもすんだよな」
そう言うとサクナ様は俺の前に、細けぇ文字の書き付けを置いた。