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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
「リアン様の練習の首尾は、如何なんですか?」
お坊ちゃんの仕上がりゃあ、代役の出来に関わる。聞いとかねーと、後で困る。
「ああ、それは大丈夫だ。お前が困らない程度には慣れて来てる。あいつは器用だからな」
「……その後は?」
「後は、まあ……なんとかなるだろう。幸運にも、相手がロゼだしな」
「幸運なんでしょうか、それは。そもそも相手がローゼル様で無ければ、なさらなくて良かった苦労なのでは」
「ははっ。そうとも言えるな……ん?」
タンム様は何か引っかかった、という顔をなさったが、その時ちょうど家令に呼ばれた。今までだったら兄弟二人でされてた仕事を、お一人でやらなきゃいけねーからな。お忙しいやね。
「よお」
「あ」
肩を叩かれて振り向いたら、箱を抱えたサクナ様が立っていた。
「この度の御慶事、誠にお目出度う御座います。……届けもんに来たぞ」
「ありがとーごぜーやーす、おはよーごぜーやーす。朝っぱらから、お疲れ様でごぜーやーす」
「服装の割に、えらく間延びしてんなぁ。どうしたよ、目出度ぇ日に、溜め息なんざ吐いて」
「……タンム様に、頼まれ事をしたんでさあ」
「頼まれ事?」
「タンム様の代役でさあ」
俺はサクナ様にちょっと愚痴を聞いて頂くことにした。
「あん?タンムの代役?」
「親族から花婿への、花嫁の送り出しでさぁね……タンム様、怪我なすったとかで」
「え。……ああ……そりゃ、仕方ねぇな……」
「仕方ねぇんですよー。若旦那様ぁ若奥様と一緒に静養中でいらっしゃらねーし、旦那様にゃあ荷が重くてらっしゃるでしょうし」
仕方ねぇなぁ分かってんだが、気は重い。溜め息だって出るってもんでさあ。朝焼けは、凶兆だったか。
……ま、他の誰かじゃなくて俺に災いが降りかかる分にゃあ、構わねーか。
「まあ……頑張れ……応援してるぞ……」
「……ありがとーごぜーやーす……」
応援、ありがとーごぜーやす。こうなったら、あんたが教えてくれた店に行くのを励みに頑張りやすよ、ええ。
「そうだ。この箱、涼しい所に置いといてくれねぇか?後でローゼルの侍女に渡してくれ」
「へい。何ですか?」
サクナ様は言い難そうに口を開き、俺は何の気なしに聞いちまった事を、軽く悔やんだ。
「花片だ。ローゼルの初床の寝台に撒く花だ」
……聞かずもがな。
今日は、お嬢様の婚約式だ。