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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
あー、居た居た。
お嬢様付きの侍女二人組が、せっせと水だの果物だのの乗ったワゴンを運んでる。こりゃ、今夜の準備だね。今夜ってなぁ、お嬢様の初夜の準備だ。
「すいやせーん。これ、花が入ってるそうで」
「花?花ならもう飾ったけど」
若ぇ方の侍女は訝しげな顔をしたが、年嵩の侍女は頷いた。
「ああ、花片ね、ありがとう。悪いけど、お嬢様のお部屋まで運んで貰える?」
「へえ」
さすが年の功だ、有無を言わさず仕事をさせらぁね。
この年嵩の方の侍女ぁ、この前俺に茶ぁ淹れさせた侍女だ。俺の中での徒名は「おっ母さん」だw 本当のおっ母さんよりゃあ、かなり若ぇけどな。ま、本当のおっ母さんは、この侍女よりもお嬢様よりも若ぇ年で墓の中に入ったから、良い事にして貰おう。
「花片って何ですか?」
三人でお嬢様の部屋に向かいながら、若ぇ方の侍女が、おっ母さんに聞いた。
「ああ、あんた、若奥様の時居なかったものね。寝台に撒くのよ」
「寝台?」
「さっき白絹の敷布に変えたでしょ?あの上に撒くの。撒き方が有るから教えるわ、タンム様の嫁取りも近いかもしれないし。ありがとう、ビスカス。助かったわ」
「お安い御用で」
お嬢様の部屋の前まで来たから受け取ってくれんのかと思ったら、二人共手が塞がってるから寝室に置いてくれと言う。……おい。酷ぇな、おっ母さん。
「初夜の拵えをした主の寝室を、誰彼構わず見せんですかい」
「やだわ、ビスカス。誰彼構わずなんか、見せる訳無いじゃないの。ビスカスだから頼んでるのよ。入って左にあるテーブルの上に置いといて」
「へー」
おっ母さん、さすがだね。否と言わさぬ頼み方の手本みてぇだわw
確かに二人の手ぁ塞がってっから、仕方ねーや。あんまりしつこく断るのも変だし、さっさと置いて戻る事にしよう。
何年振りかで、お嬢様の寝室の扉を開ける。クッソ良い匂いがして、今夜お二方が休む……んだか休まねぇであれこれなさってお過ごしになるんだかの為に整えられた寝台が、嫌でも目に入っちまいまさぁね。
白絹の一揃い。ここん家の初夜の為の特別な寝具だ。若旦那様ん時、運んだよな、これ。んな事まで一瞬で見て取れる自分のはしっこさに腹が立つw
見ねーでも良いもんを、見る。やっぱ朝焼けは凶兆だったね。
俺は箱をそっとテーブルの上に置いて、そそくさと退散した。