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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第4章 薔薇はネズミにはなれません
「…ほーら、お前でさえダメじゃない…私なんか、誰も抱き返してくれないんだわ…」
お嬢様はぐずぐず呟くと、すうすう寝息を立て始めた。
酒、残ってますぜ?今日はお疲れなのか、一瓶開けずに寝落ちし………

………じゃねえよ!!!!
何だ、今のは!!!!
抱き返すべきだったのか!?
いや無理!!
抱き付かれた瞬間、魂が体から抜けたわ!!
感触全然憶えて無え!勿体無ぇえええ!
ってか抱き締め返したら、明日正気に戻ったお嬢様に即刻暇を出されるって!!
しかし…

「…抱き締めても、良かったんですかい…?」
聞いてみてもすーすー寝ているお嬢様は、返事をなさらなかった。
俺は、一生に一度の機会を逃しちまったのかも知れねぇなー…。
ま、考えても、仕様がねえ。
眠っているあどけない顔をしばらく眺めた後、俺はお嬢様を寝室に運ぶ手配に取り掛かった。



「お前、顔色悪ぃぞ。大丈夫か?」
茶会の招待騒ぎの翌日。
俺はふらふらしながら、仕事に来ていた。

「面目無ぇ…二日酔いで…」
「あ?二日酔い?お前下戸だろ、飲んだのか?」
「あー…目の前に、残り酒が有りやし…ぅっ」
「長椅子で少し休んでろ」
「ありがとうござ…」
「あ、執務室な。控えの間は駄目だぞ」
…おい。
なんですかい、お姫さんが寝た椅子にゃあ寝かせねぇってか。
執務室の長椅子は固ぇんじゃありませんでしたか。
そりゃあ俺は砂糖菓子みてーな体じゃねーし、柔らけぇとこを何度も無理矢理擦られた訳じゃありゃあせんから、固くても別に構わねーんですが。

「お前が仕事してくれてんのは、暇潰しだろ。労働力としちゃ期待して無ぇから、ゆっくりしてろ」
「大丈夫?今日は館で休んでいても良かったのよ?それに、私が残したお酒を片付けなくても…」
サクナ様が一見酷ぇがお優しい事を言って下さり、お嬢様が一見冷てぇが気遣って下さった。
見た目だけならこのお二人は、これ以上無くお似合いなんだよなあ。
見た目だけですけどね、見た目だけ。
こんな事口に出した日にゃあ、サクナ様にここで一番高ぇ糸杉に吊されるねー。

「や、つい、勿体無えって思っちまって」
「案外意地汚いのね、ビスカス」
お休みなさいと言って踵を返して去って行くお嬢様を見て、呟いてみた。
「…俺にだって、飲みてぇ日くらい、有るんでさ…」
だあああだめだ気持ち悪ぃ…。
格好付けても、全く以て締まらなかった。
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