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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
●月●日

「…ああああー、クッソ苦しい…」

俺は、着たばっかりの服を、脱ぎ捨てたくなった。
苦行だ、苦行。俺ぁこんな正装なんざ、年に二回くれえしか着ねえ。しかも、今日みてーな長え時間着るのなんて久しぶりすぎて、いつぶりだったか憶えてねーよ。
しかし、今日のお呼ばれは、裸で行く訳にゃあいかねー。裸でなくていつもの服でも、正装以外で行ったとしたら、睨み殺されるか、埋められる。
もっとも、今日のお呼ばれの主役の内のお一人は、俺がどんな成りで行っても、喜んで下さるだろうけどねー。きっと心から喜んで、「へんたいって言葉、使ってみたわ!」とか何とか言われるんだろーね…俺ぁそれでこの前お宅の旦那に、えれぇ酷え目に遭わされやしたけどねwww

仕方ねえ。我慢だ。
自慢じゃねーが、俺は我慢にゃあ自信がある。
色んな意味で我慢し続けて、約二十年。
今じゃ我慢の専門家だね。サクナ様に頼まれた用件も果たさなきゃいけねーし、数時間きちっとした成りで居るなんざ、お茶の子さいさい…だったら良かったんですが。

「ああああああやっぱ止めだ止め!」
「ビスカス?支度は出来た?」
俺が正装を脱ぎ捨てると同時に、今日ご一緒する方が入って来られて、俺の目ん玉は飛び出たまま戻って来なくなった。

燃えるような朝焼けの色に染められたドレスに輝く石を散りばめたお嬢様は、明けの星を引き連れた朝の女神の様だった。お嬢様と長い付き合いの俺でさえ見蕩れる、空前絶後のお美しさだ。程良く焼けて引き締まった肌が、オレンジ色のドレスによって、一層艶やかに見える。

「ビスカス?」
こりゃあ、すげぇ旨そうなオレンジだぁね。
はちきれそうな実をつるんと剥いたら、みずみずしくて甘い果肉がお出ましになるって寸法だねー。

「ビスカス。」
触れたら、熱いのか、ひんやりしているのか。どちらにしても薔薇の花弁の様に柔らかくて、いーい匂いがして、さぞかし心地良いだろうn
「ビスカス!服!」

「…へえ?」

俺の限り無く妄想に近い想像は、ぶった切られた。
ぶった切られて、幸いだった。
いろいろ、危ねぇとこだった。

「どうして着てないの、服。」
「あ?あー…あ、服。」
俺はお嬢様に問い掛けられて、すっかり夢から目が醒めた。
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