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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日



「…お疲れー、俺」

披露目の会の、余興が終わった。
俺は良い仕事をした満足感と軽い疲労と喉の渇きのご褒美に、酒をぐいっと引っ掛け…
なかった。
俺ぁ下戸だからねー。しかも、絶望的に酷ぇ下戸だ。一杯までは何とか耐えられるが、それ以上は危ねえ。
特に今日は、絶対飲めねえ。人ん家だしな。
俺は酒の入ってない、果物シロップを冷たい水で薄めた奴を貰い、女子供の様にちびちび飲んだ。

余興は、ご来客方にゃあ思ってもみなかった終わり方をした。見てるだけの筈だったスグリ様が、参加されたのだ。
見てるだけの筈だった理由は、スグリ様がここらの出じゃあ無ぇからだ。婚約や結婚なんかにゃあ付き物みてぇな余興だが、地元の人間なら誰もがそこそこ出来る事でも、スグリ様にゃあ馴染みが無え。まさかスグリ様が参加されるたぁ、ほとんどの人間は思っちゃあ居なかった。
ただ一人、サクナ様を除いては。
はっきり言われた訳じゃあ無ぇが、俺に頼んだ最初っから、スグリ様を引きずり込むつもりだったと見たね。
だからこそ、俺に頼んだんだな。俺ぁ控え目に言っても天才だから、スグリ様が突然飛び入りなすっても、どうって事無え。他の奴じゃあそうはいかねーよ?
サクナ様に言わせりゃあ、自分とスグリ様は相性が良いから飛び入りだろーが初めてだろーが上手く行くのは当然だとか言いやがりなさるんだろーがね。
「ビスカス」
だが、相性がどうのこうの言うんなら、スグリ様以外の御方とやりやがってた余興は、どう説明するんで?という話だぁね。
「ビスカス?」
スグリ様以外の御方とも、相性が良いってんですか?
んな事、ウサギ姫様に言って良いんですかい?
「ビスカス!」
…あ。
知らねー内に、その「スグリ様以外の御方」が来なすってたよ。しかも、女子供なのに、酒のグラスを持ってやがられてますよ。仕方ねぇな。イケる口だからって、飲み過ぎ禁止ですぜ。

「何で御座いましょう、お嬢様。大役、大変お疲れ様で御座いました」
「…それ、嫌味?」
お嬢様は俺をじろっと睨んだ。
もしもし?もしかして、もう既に結構お飲みになってらっしゃいますか?お嬢様、熱有んじゃ無かったっけか?
「大役なのはお前でしょ。私なんか大役じゃなくってよ。前座じゃないの、前座」
あ。ちょいと、お嬢様。
上品に酒を注ごうとしている使用人を断ってまで自分でどっぼどぼ注ぎ足すのは、頂けませんぜ。
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