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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
「この建物の中から出られなければ、大丈夫でしょ。怪しい奴も見当たりませんし」
「だと宜しいのですが…」

あーあー。旦那だけじゃなく、家令も心配性かよ。
クロウなんざ、たとえ相手が王様だろうがなんだろうが、心配なんぞ到底しそうにねぇんだけどな。うっかりウサギの事ぁ、心配なのか。…あれか。うっかりどころじゃ無ぇ位、凄ぇ酷ぇうっかりだからか。
「あの余興の後ですから、男にちょっかい掛けられる様な事も、よっぽどの事が無けりゃあ有りませんでしょ」
「…そうだと宜しいのですが…」

駄目だこりゃ。本格的に心配してやがる。
サクナ様のが移ったか。それか、ウチのお嬢様みてぇに、知らねぇ内に丸め込まれて、絆されたかねー?
…無え無え無え。樫の木みてぇに固ぇ奴に、それは無ぇって。

「どっかでお見かけしたら、早めにお戻りになる様に、お声掛けときますよ」
「有り難う御座います。お手数お掛けして申し訳御座いませんが、宜しくお願い致します」
…固っ。
徹頭徹尾、固かったね。
俺はクロウに片手を挙げると、部屋を出た。


「うーん…居ねーなあ…」
廊下を歩いて用を足しに行く間、ウサギ姫の姿は、見なかった。
もっとも、ご婦人のお手洗い方面は、探して無え。男一人でご婦人のお手洗い近辺をうろつくなんざ、一つ間違やぁ怪しい奴ですからねー?
スグリ様は、クロウに行き先を伝えて部屋を出ている。行方不明になってる訳じゃ無え。なら、そんなとこまで俺がわざわざ見に行く必要は無ぇだろ。

「よし、戻ろ…あ。」
そう考えて踵を返しかけたところで、大事な用事を思い出した。
忘れてた。
俺ぁウサギ姫様に、聞きてぇ事が有ったんだった。
…仕方ねえ。
聞きてぇ事に必要な物が懐に有ることを確かめると、ご親切極まり無い俺は、ご婦人のお手洗い方面に向かう事にした。
普段は行かねぇ様な場所だが、どこにあるかは知っている。この建物にゃあ、お嬢様の仕事場が有る。だから、同じ敷地内のサクナ様の私邸であるお屋敷よりも、訪れる頻度は高い。なもんで建物の半分くれぇは、勝手知ったる場所なんですぜ。
だが、ご婦人方しか入れない場に入ってなんか行けねぇし、真ん前までだって行き辛え。とりあえずは、近くまで行って様子を伺う事にした。
ところが、目的の場所付近にゃあ、人の気配が全く無かった。
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